大規模で可能性に満ちたインド市場。今こそ日本企業がインドに行くべき理由とは?

Shah:こんにちは、Beyond Next Ventures Indiaの1号社員として入社したShahです。今回はインド大使館の宮本公使と共に、私が生まれ育った「インド」の可能性をお伝えしたいと思います。

登壇者

在インド日本国大使館
経済班長 公使

宮本 新吾 氏

筑波大学生物科学研究科 理学修士(生物学) 卒業
スタンフォード大学 国際関係学 文学修士(国際関係学) 卒業
1994年 外務省入省
1999年~2002年 日本政府国際連合代表部
2002年~2006年 外務省北米第一課
2006年~2007年 外務省安全保障政策課(兼海上安全保障政策室)課長補佐
2007年~2009年 外務省安全保障政策課(兼海上安全保障政策室)首席事務官
2009年〜2012年 在インドネシア日本大使館 政務班長 参事官
2012年〜2015年 在アメリカ合衆国日本大使館 経済班 参事官
2015年〜2017年 外務省国際安全・治安対策協力室長
2017年~2019年 外務省南東アジア第二課長
2019年9月~ 現職

いまインドに来るべき理由

Shah:若いエネルギーと13億人もの人口によって、かつてないスピードで経済発展を遂げるインド。長年日印の架け橋として活躍されている宮本さんは、「インドに来るなら今だ!」と仰いますが、なぜでしょうか?

宮本:まずインドは巨大で若い人が多い国です。国の面積や民族、言語が多様な国で、感覚としてはEUと同規模であるイメージを持ってもらうとわかりやすいと思います。

私たちがEUをみるとき、たくさんの民族や言語があり、多様性のある大きなグループをイメージすると思うのですが、インドはEUを全て合わせたのと同じくらいの規模感があります。人口はもっと多いです。

多様性のある大規模な市場なので、日本企業が海外展開を考えたときインドを選択肢に入れるべきだと考えています。そして、もしインドで挑戦したいと思うのであれば、10年待たずに今来ないと間に合わないと思います。インドの発展はものすごいスピードで起こっているので、この波に乗るなら今がチャンスです。その理由を以下で説明させていただきます。

インドに進出する日系企業の推移


宮本:日本大使館では、毎年インドに進出している日本企業の数を調査しているのですが、2006年時点で267社しかなかったものが、2020年では1455社まで増えています。

ただ、2017年頃から横ばいでの状況が続いています。これにはパンデミックの影響もあると思いますが、私は日本の企業がどんどんインドに出て、製造ラインを作り、現地で運用できる状態にする、そのプロセスがひと段落したことが大きな理由の一つだと考えています。

印自動車シェアNo.1を誇るマルチスズキの成功体験から学ぶ、インドで勝つための戦略という記事も公開しています。マルチスズキで約8年半にわたり新規事業に携わった和久田氏から、インドでの成功戦略や大企業とスタートアップが共創を果たすための具体的なアプローチについてお話しいただきました。

国別にみた日系企業の進出状況

宮本:インドに進出している日系企業は、首都近辺のハリヤナ州、デリー準州を中心に、金融の中心地であるマハラシュトラ州、インドのシリコンバレーと言われるバンガロールがあるカルナタカ州などに集中しています。

一方で、日本企業の国別進出数を見ると、中国32,887社、アメリカ6,702社、インド1,455社と、国土面積が大きく人口も多い中国やアメリカと比べると、日系企業のインド進出はいまだ少ないです。たしかに年々インドへの進出は増えてきてはいますが、インドの将来の可能性などを考えると、「10倍くらいあってもいいのでは?」と私は思います。

ちなみに、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシアやタイなどにも海外拠点を持つことはよく聞きますが、これらの国々はインドと同等の大体1500社ほどになります。

インドと日本の行き来は少ない

宮本:インドで過ごしていると、インドの日本に対する感情はとてつもなくいいと感じます。街中でインドのお坊さんに挨拶をして、日本から来たことを伝えたら、「日本がしてくれたことに感謝します」と言われることもあるくらいです。ただ一方で、日本に関心があるのか?というと、実はそうでもないというデータもあります。

コロナ前の2018年のデータですが、国別の日本に入国した外国人の数を見てみましょう。人口1000人あたり何人が1年の間に日本に来たかを見ると、まず韓国がトップで1000人中146人。他の国をみると、タイが1000人のうち16.7人、中国は6.02人、インドネシアは1.48人となっています。その中でインドは0.114人です。つまり、日本に来るインド人はすごく少ないということがわかります。

逆に日本人が海外旅行にいくときも、インドを選ぶ人は少ないと思います。私が推測するにこういった日印の行き来の少なさの原因はお互いがお互いのことをただ知らないからだけだと思っています。

いま、日系企業1455社がインドに来てビジネス展開をやっていることを日本人は知らない。そしてインドも日本と協業することによってもっと大きなビジネスができるというイメージを持っていない。実際には相当な規模でビジネスはやってはいるのだけれど、大多数の人は知らない。

我々はそれをどうやって気づかせるか、そこが大事だと思っています。インドにどのくらいポテンシャルがあるのか、どうすればインドでビジネス展開ができるのか、そんなことを知るきっかけが増えていけばいいなと思っています。それを達成するためには、今回のイベントを含め人との交流が必要だと思っています。

ヒンディー語を学ぶのは難しいのか?


宮本:インドでは英語が通じると思われている方が多いと思うのですが、実際には地元の工場や警備員さんには英語は通じないことが多いです。教育レベルも様々ですし、現地の人としっかりコミュニケーションをとるためには、ヒンディー語が必要だと思います。

私は今ヒンディー語を勉強しているのですが、勉強して驚いたのは、ヒンディー語と日本語は文法が同じだということ。言語分類学的には全然違うはずなのに文法が似ているのは面白いと思いました。なので日本人にとっては、「英語よりヒンディー語の方が学びやすいのでは?」とさえ思っています。もしインドでビジネスをする機会があったらぜひヒンディー語を勉強してみてください。

日印国交成立70年記念がお互いを知るきっかけに

宮本:2022年は日印国交成立70年にあたる年です。両国政府とも70周年を記念するために、1年を通じてさまざまな記念事業を行っています。

また同じくして、インド独立75周年でもあります。インド国内ではお祝いムードになっており、この二つの記念がインドと日本の関係をさらにより良くする機会になるのではないかと思います。

私も引き続き日本企業が直面する問題の解決策を一緒に考え、企業活動をスムーズにできるように貢献していきたいと思っています。

最後に

Shah:Beyond Next Venturesでは、2020年にインドのシリコンバレーと言われるベンガル―ル市に100%子会社を設立し、日本企業とインドスタートアップのオープンイノベーションの推進に力を入れています。インドへ進出を検討している、また事業拡大を模索されている企業ご担当者の方はぜひ弊社までご相談いただけると幸いです。