スタートアップの成長フェーズに応じて求められる人材とは?~自分らしく働くスタートアップの見極め方~

三國:こんにちは、Beyond Next Venturesで出資先スタートアップの採用や組織成長を支援している三國です。

エン・ジャパンの調査によると、34歳以下の転職者のうち、大手からスタートアップに転じた人の割合は23年に約26%と19年比で14ポイント上昇するなど、スタートアップへの転職は増加傾向にあります。

「スタートアップ」と一括りにしていますが、各事業ステージによって求められる人材やフィットする人材は異なります。今回は、ベンチャーキャピタルで出資先の採用支援を行う、リアルテックファンド、WiL、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター、そしてBeyond Next Ventures のHRプロフェッショナルが集結し、「スタートアップの成長フェーズごとの特徴と、それに応じて求められる経験や人材」の視点から、自分らしく働くスタートアップの見極め方についてお話しました。

登壇者

池田真実

リアルテックホールディングス株式会社

池田真実

海外にてShared Service Centreの立ち上げ。経営企画としてBPOマネジメント、採用・育成・評価等を牽引し2年で100人規模へ。帰国後Startupにて人事の立ち上げに従事。前職でマザーズ(現グロース)市場へ上場。現在はリアルテックファンドにて投資先Value UpのためPeople分野にて支援。

佐藤友美

株式会社TBA(株式会社WiLの100%小会社) HR Director

佐藤友美

04年リクルート創業者の江副浩正が経営する(株)スペースデザイン入社。江副氏から仕事の直伝を受け育つ。その後バイオベンチャーに参画し東京支社立ち上げ、営業/商品開発/PRなどBizdiv全般携わり2年後マザーズ上場。07年友人とアパレルブランドを起業。出産を機に約10年間は専業主婦。18年リクルートHD(RGF)へエグゼクティブヘッドハンターとして入社。個人の活躍と企業成長の両面に貢献し日本の産業社会の活性化に寄与したく22年WiLの人材支援チームTBAへ参画。

松本美咲

JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社 シニアオフィサー

松本美咲

2014年に大手監査法人へ入所。国内上場会社監査を多数担当し、2019年よりIPO支援部署にて、上場準備会社への監査やスタートアップ支援業務を担当。2021年10月よりVGIへ出向。

モデレーター

三國弘樹

Beyond Next Ventures株式会社 投資部企画推進チーム マネージャー

三國弘樹

2012年4月 JAC Recruitmentに入社。 エグゼクティブ部門にてベンチャーキャピタルの投資先の経営幹部の採用に関わる。
2020年にBeyond Next Venturesに参画し、出資先スタートアップの採用支援をはじめとする組織成長支援を担当。

※所属・肩書はイベント実施日時点

スタートアップの成長フェーズと求められる人材

Beyond Next Ventures 三國:
スタートアップの成長段階には、シード、アーリー、ミドル、レイターといったフェーズがあり、各フェーズで求められる経験や人材が異なります。

例えば、下記のように異なります。

・シード・アーリー期:POC(Proof of Concept)やコンセプトの検証が主な課題
・ミドル・レイター期:安定した収益化やスケールをしていくことが重視

さらに、組織の成長に合わせた上場体制の準備や人事制度の構築も求められます。

シード・アーリー期のスタートアップに求められる人材

REAL TECH 池田:
アーリー期でPMF(プロダクト・マーケット・フィット)が始まるので、事業のピボットも当たり前の段階です。そのため、採用する人材においても、入社後に役割・事業・プロダクトが変わる可能性は大いにあるので、柔軟に対応できる適性は重要です。

また、まだ少人数の規模で運営していることが多いため、選択肢がありつつも、責任を伴う自立が求められる環境でもあります。自分の経験を広げるチャンスも多く、得るものは非常に大きいと思います。

Beyond Next Ventures 三國:
実際に、シード・アーリー期では一人あたりのジョブが広範に亘ることが多いですね。そのため、現在の職種からキャリアチェンジを考える方にとって、多様な仕事のチャンスが掴みやすいと思います。

ミドル・レイター期のスタートアップで求められる人材

WiL 佐藤:
私が以前、バイオベンチャーで2年間勤務した経験も踏まえてお伝えすると、ミドル・レイター期のスタートアップでは、例えば、自社製品を市場で目にする機会が増えるなど、事業の成長を身近に感じることができます。このような体験は、非常に大きなものだと感じます。自分の方向性を見失わずに、”北極星”のように自分がどこに向かうのかを常に自覚し、その方向性を維持することも重要です。このような能力を持つ人材が、スタートアップの成功に貢献できると思います。また、個のミッションに加えて、周囲との協調や共通の目標への貢献も求められます。

JIC VGI 松本:
私たちの組織は、特に「管理部門の強化」に焦点を当てています。しかし、管理部門は組織全体のコストセンターであり、特にレイター期以降のステージだと、IPOに向けて黒字化が必要です。そのため、コスト増を避ける傾向があります。一方で、この段階では「一人で経理や人事などの複数の役割を担う」というよりも、スペシャリスト人材が求められる傾向にあります。一方でスタートアップならではの柔軟性と俊敏さも合わせて求められます。

特にIPO前後の経験は貴重で、上場前後を経験できる機会は限られています。万が一その企業が上場できなかったとしても、IPO準備段階の経験が得られるのは価値があります。私が監査法人に勤務していた頃、スタートアップのCFOと一緒に上場支援に取り組んだ経験がありますが、業務が深夜まで及んだりもするので、体力は絶対的に必要だと感じました。最後の段階で“馬力”が必要になってくる局面もあるので、そのような人材が求められると思います。

VCにスタートアップへの転職を相談するメリットとは?


Beyond Next Ventures 三國:
現在、独立系のVCやシード・アーリー期に投資するVCでは、採用支援が充実してきています。私たちが出資先スタートアップに必要な人材を紹介したり、ときには一緒に面接を行うこともあります。最後に、VCにスタートアップの転職を相談するメリットについて、みなさんから意見をお聞かせください。

REAL TECH 池田:
求職者の方がVCにスタートアップへの転職を相談することは、メリットとデメリットがあると思います。例えば、私にご相談いただくと、ご紹介するのはリアルテックファンドの投資先に限定されてしまいますが、その代わりに濃密な情報を得ることができます。私たちは投資先のバリューアップを重視しており、人材の採用数よりも質にこだわります。だからこそ、本当にいいと思った人材には濃密な情報を提供し、入社につなげることを目指しています。

Beyond Next Ventures 三國:
情報の密度だけでなく、接点も限定されずに広がると思います。たとえ今回ご縁がなくても、別の機会でご紹介につながることもあります。実際、起業に至る案件には時間がかかることがあり、中長期的な接点が双方にとってメリットになります。

入社後においても、VCとスタートアップの関係性があるので、管理部門などで入社されるとその関係が継続されます。例えば、我々とともに評価制度や労務管理などに一緒に取り組む場合もあります。また、会社が目標を達成した後は、次のキャリアに進むこともあります。実際、前職で採用支援をした方が、当社の出資先に入社されたというケースもありました。こうした関係性は長期的なものであり、5年や10年といった期間で繋がっていくこともあります。

WiL 佐藤:
VCのような成長産業や未来を見据えた業界に関わる人々との交流は、今後のキャリアを考える上でも重要だと思います。いまは「人生100年時代」と言われている中で、将来を見据えて、転職や活躍の場を変えることは自然な流れだと思います。今後どのような業界がくるのか、どのような未来になってくるかという予測も含めてVC側と情報を共有し、いつかの転職のタイミングに備えていただくという活用方法もあると思います。

また、私たちは成長が見込まれる企業に対して投資を決定しています。それは年間100件以上の会社と話して、やっと1件投資を決定するようなものです。多くのスタートアップの中から選ばれて、投資家による厳格なスクリーニングを経ているということが、一つの安心材料になるのではないでしょうか。

JIC VGI 松本:
大企業からスタートアップへの転職は、一部の人にとってはかなりハードルが高いと感じるかもしれません。たとえば、本人はスタートアップでの仕事に興味があっても、家族からは「本当にスタートアップでやっていけるの?」という反対の声が上がることもあります。このようなケースで、VCが出資しているという点がスクリーニングされていると言えると思います。また、自分が本当にスタートアップの環境で働けるかどうかを試す方法として、一度VC側で働き、そこでのスタートアップの動向や投資家の視点を経験してから、スタートアップへの転職を考えるという選択肢もあると思います。このような観点も含めて、気軽に相談していただけると嬉しいです。

スタートアップキャリアを応援します

Beyond Next Venturesでは、ディープテックスタートアップの起業や経営に関心がある方とのカジュアル面談を実施しています。DTx(デジタル・セラピューティクス)等の医療・ヘルスケア、創薬・バイオ、アグリ・フード、AI、宇宙など様々なスタートアップのCXOポジションの紹介、また、経営者を目指す方に向けて、技術シーズをもつ研究者との共同創業を実践するプログラム「INNOVATION LEADERS PROGRAM」への参加推薦などを行っています。少しでもご興味のある方は、ぜひご連絡ください!

Hiroki Mikuni

Hiroki Mikuni

Manager