インドにおける日本企業のチャンスは「技術力」にあり

Shah:こんにちは、Beyond Next Ventures Indiaの1号社員として入社したShahです。私は主に日本とインドのビジネス発展に向けて、日印オープンイノベーションの活動に取り組んでいます。

Beyond Next Venturesは、いまインドにとても注力しています。20年1月にはインドのシリコンバレーと言われるベンガル―ル(バンガロール)市に子会社を設立し、スタートアップへの投資や日印連携に力を入れています。今回は、「なぜ今インドなのか」日本企業のインドビジネスの可能性にも触れながら、お伝えします。

登壇者

Beyond Next Ventures India
Head, Business Development Group

Shah Mayur

金融、IT、R&Dサービス分野で25年の経験を持ち、日印間におけるビジネス開発のエキスパート。2009年にみずほ銀行のインドのニューデリー支店に入社。12年以上にわたりシンクタンク部門を率い日本企業とインド企業の積極的なコラボレーションを先導。また、多くの日本企業に対し、質・量的な調査分析を通じて、インドスタートアップ企業への投資機会に関する意見形成を支援。2021年5月、当社参画。インド支社にて日本企業や投資家とインドスタートアップとのオープンイノベーション強化に従事している。横浜市立大学 国際経済学 修士号取得。

ユニコーンは36社に。スタートアップ大国第3位に君臨したインド

Shah:インドの人口は世界最大規模で、25歳未満の人口が50%と非常に若い方が多くエネルギッシュです。最近はスタートアップ業界も大変な活況を見せており、2021年はユニコーンが36社も誕生し、アメリカ・中国に次いでユニコーン数第3位に君臨しています。

ユニコーン入りしたスタートアップの事業領域としては、フィンテック、ヘルスケア、エドテックが多く、IPOしたフードデリバリーのzomatoや電子決済のPaytmは1兆円近くの時価総額が付いています。

最新の傾向としては、インドで創業し、拠点をアメリカ等に移して成功する企業が増えていることです。BtoBのSaaSを提供するFreshworksは、もともとインドで13年以上前に立ち上がり、今ではアメリカに本社を移しています。その後、先日ナスダックに上場し、1兆円企業になりました。

フィンテック、エドテックが投資領域としては活況

2020年のインドのスタートアップ投資額は、年間1兆円にも上ります。日本は5000億円なので、日本の約2倍の資金調達が行われています。さらに、2021年は第3四半期だけで1兆4000億円となっており、年々投資額は増えています。

投資領域で最も多いのはフィンテック関連です。これは、金融基盤が社会インフラとして整備されている段階の新興国に共通して見られる現象です。また、ベンチャーキャピタル的にも投資効率が良いという背景もあります。

次に多いのは、エドテック(教育)関連です。インドには子供が多く、富裕層を中心に教育熱心な方も多いのが背景としてあると思います。

我々としては、今は割合は少ないものの、今後はアグリテックディープテック領域が伸びてくるのではないかと予想しています。

インドは親日である

日本企業が知るべきことの一つは、「インドは親日である」ということです。特に現地のシニアの方であればあるほど、日本生まれのテクノロジーや文化に触れながら生活してきた過去があり、非常に親日的です。

また、今のインドは日本以上にデジタル先進国なので、デジタル系の新規事業のフィールドとして適している点や、英語を話せる人が多いため、グローバル人材を育成させる場所としても、非常に優れていると思います。

インドビジネスにおける日本企業の勝機は「高い技術力」

今のインドはハードウェアやディープテック領域が弱いため、ここに日本企業の技術力が活かされるチャンスが眠っていると我々は考えています。

一方で、ハードウェア領域はデータビジネスと常にセットなので、ハードウェア領域における協業・リソース提供をしながら、データビジネスの取り込みや新規参入を行っていくのがいいのではと思います。

あとは、「開発拠点をインドに移す」ことも今から先手を打ってやるといいのでは、と思います。インドでは年間150万人以上の理工学系の学生が輩出されており、エンジニアリング大国です。一方で、日本は将来10万人単位でソフトウェアエンジニアが不足すると言われています。

インドの優秀なエンジニアは、日本のエンジニアの1/4のコストという相場感もあり、今からソフトウェア開発リソースをインドでしっかり担保しておくことは企業競争力そのものだと思います考えています。弊社の出資先スタートアップにも、まずインドに開発拠点をつくることを勧めています。

インドスタートアップが日本に期待すること

もちろん資金的な支援への期待はありますが、やはり日本の技術力への期待は大きいでしょう。今なお「日本は技術の国である」という印象は共通してもたれています。

インドのハードウェアのスタートアップを見ても、プロトタイプや小ロットのものは作れますが、大量生産は技術的にまだ弱いと感じます。そこに対して、日本企業が有する製造ラインの技術を、インドのスタートアップと連携させることができれば、win-winの関係が作れるのではないかと思っています。

インド人はアントレプレナー精神が強い人が多いので、スマホでの展開価値もあると認識されれば、ものすごい速さで市場に展開されていきます。今後、インドの活発なエネルギーと日本が築き上げてきた技術力を融合させて、新たなビジネス展開が次々に進んでいくでしょう。

まだまだ日本に届いていないインドの情報も多いので、今回の内容がインド進出を検討されている企業やインドスタートアップと繋がりを持ちたいと考えている方のお役に立てれば幸いです。弊社へのご相談も随時受け付けております。
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