VCが教える、MBA後にCEO/CxOを掴むためのヒント【日米欧ビジネススクール卒業生とのトークセッション】

MBAを転機に経営に挑戦してほしい

鷺山:Beyond Next Venturesは累計320億円超のファンドを運用するディープテック領域に強い独立系ベンチャーキャピタルです。私たちの出資先においても、CureApp創業者の佐竹さんやメトセラの野上さんなど、MBA卒の起業家・経営者の方が多数いらっしゃいます。

もちろんMBA卒業後のキャリアパスは、起業や経営以外にも、現職に戻る・コンサルファームへ転職するなど多種多様ですが、経営者へのエントランスパスであることは間違いないと思っています。

そこで今回は、MBA卒業後のキャリアを模索している方に向けて、スタートアップの経営者のキャリアを志向されたMBA卒業生お呼びして、経営の道に進んだ背景やMBA前後での考え方の変化などについて伺いました。

本記事は、2023年8月8日に開催されたトークイベントのレポートです

ゲスト紹介

末廣 将志さん

SWAT Mobility 日本法人 代表取締役

末廣 将志さん

(IESE 2018年卒業)

新卒で総合商社に入社し、中東での発電所・変電所のインフラ開発、自動車メーカー向けの製造機械の営業に従事。欧州でMBAを取得後、グローバルコンサルティングファームのシンガポール法人に入社し、戦略策定やPMIに従事。2019年にシンガポールのモビリティスタートアップであるSWAT Mobilityに入社し、日本法人の責任者に就任。

中川 高之さん

株式会社 ALGO ARTIS ビジネスチームリード

中川 高之さん

(コロンビアビジネススクール 2022年卒)

東京大学薬学部修士卒、新卒でアビームコンサルティングに入社。2017年に経営戦略コンサルティングファームのA.T.カーニーに移り、マーケティング戦略や新規事業の策定支援、全社業務改革やコスト削減支援、M&Aビジネスデューデリジェンスなど、幅広いプロジェクトに参画。2022年にコロンビアビジネススクールMBAを卒業し同年より現職。

MBAを選んだ理由、行く前とのキャリアの変化

鷺山:そもそもどういう目的でMBAを選び、実際に通われる中でどう考え方が変わったのか、ぜひお聞かせください。

末廣:私は8年間総合商社で働き、自分にとって大きなチャレンジがなくなったと感じていた時に、バルセロナ(スペイン)のビジネススクールにMBA留学することを決意しました。

行く前は、「経営をできる人になりたい」「グローバルで活躍できる人材になりたい」という2つの想いを持って、海外MBAに行きました。

鷺山:末廣さんと卒業直後にお会いした際に「ディープテック領域で起業してくださいよ」って私が言うと、「俺はでかいことをやりたい」と仰っていてめちゃくちゃ燃え上がってる感じがしたのですが、何かMBA中にきっかけがあったんですか?

末廣:MBAの仲間たちは本当に志が高い人ばかりで、知らず知らずのうちに触発されていたかもしれません。別の国からスペインで起業するために来ている仲間もいて。海外で起業するなんて一番ハードル高いじゃないですか。

鷺山:ありがとうございます。中川さんはいかがでしょう?

中川:私はアビームコンサルティングで業務コンサルティングやシステム導入に3年携わった後、戦略系のA.T.カーニーに5年間在籍しました。後半の2年間は社費でコロンビア大学のビジネススクールに留学させてもらい、卒業後はAIスタートアップ「ALGOARTIS」に入社し、会社全体のビジネスチームを統括しています。

MBAに入学した理由は、「経営をゼロから学びたい」という思いからです。また、前職の海外プロジェクトにおいて歯痒い想いをした経験もあり、「グローバルな環境でも活躍できる人材になりたい」という想いもありました。

ちなみに私は、MBA入学前後で大きく考え方が変わりました。MBAに行く前はまさか自分がスタートアップに入るとは全く考えておらず、むしろ出向元のA.T.カーニーに戻るつもりでいました。

しかし、実際にMBAを学ぶ中で、予想とは全く異なる方向に気持ちが向いていきました。というのも、MBAはキャリアを見直すのに非常に適した環境だったんです。日々忙しく働いていると気づかないような職業やスタートアップの情報がどんどん入ってきて、興味が湧いてきました。

MBA卒業後のキャリアの決め方

鷺山:MBA卒業後は多様な選択肢があったはずですが、どういう軸で今の選択をされたのですか?

中川:理由はシンプルで「スタートアップに惹かれたから」です。きっかけは、MBA在学中のインターンを通じてスタートアップで働いたことです。実は起業することも考えていましたが、私は社費でMBAに通っていたので資金繰りの面で厳しく、それなら経済的に安定しつつも将来的に生きる経験として、既存のスタートアップで事業を経営する立場が最適だと思ったのです。

この決断には当然迷いもありました。しかし、私はとにかく経験を重視したかったので、1年経った今ではスタートアップのことをかなり知ることが出来ていて、非常に良い選択だったと感じています。

鷺山:ひと昔前はスタートアップは年収が極端に低いケースもよく見ましたが、ここ数年はVCファンドも巨大化しており、だいぶ給与水準は上がっていますよね。その意味ではスタートアップを選びやすくなったかもしれません。末廣さんはいかがでしょうか?

末廣:私は「MBA卒業後は起業するか海外の現地法人で働くか」の2択で考えていました。なかなか起業に踏み出せずにいた時にタイミング良く海外企業からオファーをいただき、「海外の現地法人で働く」という目標をまずは達成することに決めました。そこで働く中で、「やっぱりスタートアップで働いてみたい」と感じ、VCさんから紹介してもらった今のシンガポール企業の日本法人立ち上げを担うことになりました。

大企業とは違う、スタートアップの魅力

鷺山:お二人ともMBA卒業後はスタートアップで働かれていますが、皆さん大手企業ご出身ですよね。スタートアップと大企業、どんなギャップがありますか?

中川:僕が感じた大企業とスタートアップのギャップは、スタートアップは想像以上にプレイングマネージャーになる点です。そして、想像以上にプレイングの割合が多いです。自分が設計した仕組みを自分が試して、PDCAサイクル全部回して、次に活かす、この流れを全て自ら一貫して進めないといけません。一方、大企業の場合はマネージング側かプレーイング側か、どっちかに役割を振れます。今となっては楽しめていますが、最初は結構しんどかったですね。

鷺山:業務の幅の大きさや1人で全部回すみたいな話は一色さんと共通していますね。将来的な起業を見据えた時に経験できてよかった点は何ですか?

中川:スピード感です。大企業向けのコンサルティングを行う前職では、意思決定の質や、考え抜いて正しい答えを出すことを重視していました。一方、スタートアップではより早く決断することが価値になります。いま私は会社内で意思決定する場面が多いですが、早く決断することによるメリットは多いと感じています。

鷺山:なるほど。末廣さんはいかがでしょう?かなり意思決定を担っていらっしゃると思いますが、スピード感の違いは感じましたか?

末廣:はい、意思決定の場面はかなりありますが、前例もなく、正解が分からない状況でも、最後は自分が選んだ方を「正しい」に持っていく覚悟で実行しています。たとえ失敗しても巻き返せばいい、という気持ちで向き合っています。

鷺山:すごくスタートアップらしい回答ですね。以前と比べてご自身の中で一番変わったことは何ですか?

末廣:心から悔しい、嬉しい、という気持ちがでかくなりました。「自分が負けたら会社が終わりだ、だから何とか勝ちたい」みたいな気持ちが強くなりました。魂でお客様を満足させたいと思ったり、ロジックではなくて気持ちで勝つ、といった感情が沸くことが、スタートアップに入ってから増えました。

MBA後のキャリアに関してアドバイス

鷺山:改めて、MBA在学中の方や検討中の方にメッセージをいただければと思います。

末廣:僕も一色さんと同じで、キャリアを選ぶ際に直感がかなり大事だと感じています。今後のキャリアを「あと2年コンサルしてその後どっかのメーカーの経営して〜」みたいな論理的な予測は、あまり意味がないのかなと。そのときの「これ面白そうだな」という直感に従って行動することをお勧めします。

中川:私も同感で、直感に従った結果今の会社にいるので、直感に従うことの大切さを非常に感じています。そのための戦術的な話として「MBA在学中にインターンをする」「短期・業務委託などでスタートアップに関わってみる」などのリスクをおさえて飛び込む方法もあるので、とにかく面白そうだと感じたものはどんどん経験していってほしいです。
鷺山:経験によって直感の幅を広げて、その後は直感に従って行動することが大切、ということですね。貴重なお話しをありがとうございました!

最後に

Beyond Next Venturesでは、起業家や経営者を目指すビジネスパーソンの方が、ディープテック・スタートアップを研究者と共に立ち上げる機会を提供しています。短期プログラムでの実施や、出資前提でのプログラムなど、複数の取り組みがありますので、気になる方はぜひ私・鷺山までご相談ください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Shota Sagiyama

Shota Sagiyama

Executive Officer / Talent Partner