有馬:皆さんこんにちは、Beyond Next Ventures アグリフードチームの有馬です。今回は、2024年3月中旬にアメリカのロサンゼルスのアナハイムで毎年行われている「Natural Products Expo West 2024」に梁くんと行ってきましたので、そのレポートをお届けします!
有馬:梁くん、率直にどうでしたか?
梁:一言で言うと圧倒されましたね。ものすごい人がたくさんいて、確か昨年は6万5000人が来場していたみたいで、今年はそれ以上に盛り上がっていたのではないかと思います。ホテルを3棟ほど貸し切っているぐらいの規模でしたね。
Natural Products Expo West 2024 概要
- 開催時期:2024年03月13日 ~ 2024年03月16日
- 開催地:アナハイム / 米国
- 会場:Anaheim Convention Center
- 出展対象品目:ナチュラル・有機、ヘルシーな食品、食材、サプリメント等
- 出展社数 : 約3330社(2024年のExhibitor’s Listより)
- 公式ウェブサイト:https://www.expowest.com/en/home.html
有馬:各ブースのビジュアルもすごく手が込んでいて、一発でどの会社か分かるほど、絵や色で見せる感じでしたね。雰囲気もお祭りのようで、踊っている人もいれば、ラッコの着ぐるみを着ている人もいれば、自分のリュックに大きく自社サイトのQRコードを貼り付けている人もいましたね(笑)。
梁:出展も3,000社以上ありましたが、トレンドがいくつかありましたよね。
有馬:そうだね。5つほどトレンドを見つけてきたので、皆さんに共有したいと思います!
「機能性飲料」の台頭
有馬:まず一つ目が、「ドリンク」。今や植物肉や代替タンパクなど、さまざまな食のトレンドがある中で、ドリンクの進化系が数多く出展されていました。
この「Sleeping Bottle」は韓国の企業が開発した「よく眠れる」と謳っているドリンクで、公式情報によると、約10種類の天然成分などから作られ、睡眠リズムと質の向上を促進するとのこと。プラントベースかつ糖類ゼロで韓国でも大人気のようです。
梁:皆さんパッケージやマーケティングをすごく工夫していますよね。アーティストとコラボしたり、現地に好まれやすいフレーバー(ハイビスカスやレモンジンジャーなど)を少し加えたりして、グローバル市場で受け入れられやすい形で販売していました。
有馬:味は本当に独特で好みが分かれると思うのですが、「よく眠れる」とか「効率的にプロテイン摂取」など機能面での売り方が上手ですよね。あとはパッケージがカラフルですごく目を引くというか。「なんだこれ?ちょっと試してみよう」と思わせるのが上手な印象でした。
梁:「そういうのは日本でもあるじゃん」という感じはするのですが、総じて1カテゴリあたりの商品のラインナップ数が圧倒的に多かったです。日本では1カテゴリあたり多くても5つほどの商品数しかないイメージですが、海外では「10~20個ほどの競合商品が存在しているのが当たり前」みたいな感覚です。機能やフレーバーなどあらゆる要素を組み合わせて幅広く展開されていました。
有馬:あとは「水」そのものの商品もとても多かったですね。日本は昔から水が美味しく、水質管理の技術は世界トップクラスと言われていますが、世界でも今「水」への注目が高まっていると感じました。
「きのこ」の活用
有馬:二つ目のトレンドは「きのこ」ですね。これまで代替肉と言えば豆由来が主流でしたが、きのこの栄養や機能性がとても注目されていて、今回はきのこ由来の食品やドリンクをたくさん目にしました。きのこ由来のコーヒーもありましたが、梁くんは試しましたか?
梁:はい、米Host Defense Mushroomsの「Mycobrew Cocoa」や「Mycobrew Matcha」を試しましたが、正直味は好みではなかったですね…。ただ、米国では最も売れているキノコサプリメントブランドのようです(同社HPより)。一方で、代替肉については、米MyForest Foods社の「MyBacon」を試しましたが、食感はお肉に近く、植物肉に比べると「肉々しい繊維系の食感」が印象的でした。
有馬:実は日本でもきのこを活用したフードテックは存在していて、植物性卵を開発する「UMAMI UNITED JAPAN」は、きのこの一種「きくらげ」を使うことによって、卵本来のコクやうまみを出しています。少し前に日本テレビの「シューイチ!」にも特集されていて、注目が高まってきています。
「原料由来」の機能性食品
有馬:三つ目のトピックは、原料由来の機能性を生かした食品です。
梁:様々な商品を目にしましたが、その中でも特に印象に残っているのは「ヘンプ由来」、つまり大麻由来の製品です。日本では当然見かけませんが、アメリカでは多くの州で認められているため、サプリやチョコバーなどに使われています。売上が数十ミリオンもあるスタートアップもいて、市場の大きさを実感しましたね。
有馬:盛り上がっている感じはありますよね。日本でも大麻に含まれるCBD由来の製品がメディアに登場したりしていますが、まだまだ物議を醸していますよね。
梁:そうですね。日本では規制があるため悪いイメージがありますが、アメリカではしっかり市民権を得ている印象です。
有馬:アメリカでは嗜好品としてだけでなく、効率的に栄養を接種している傾向も見られましたね。
梁:大麻の種子にも脳機能の改善や免疫力の向上、デトックス効果など様々な効果があるようで、それをうまく強調している事例がありました。やはり「食×健康」はこれからも外せないトレンドの一つだと思います。
加熱する「アジアの食」人気
有馬:四つ目のトレンドは「アジア」ですかね。基本的にはアメリカのスタートアップが多かったのですが、意外にも小籠包や餃子を売っているアジア圏のブースに人だかりができていました。
梁:私もそれはとても感じました。有馬さんと一緒に食べた中国企業のMìLàの小籠包もすごく美味しかったですね。他には、完全ビーガン対応かつ祖国の味をちゃんと再現している商品もありました。特に韓国系の食品をたくさん目にしましたね。
有馬:たしかに韓国系は多かったですね。でも、日本企業も想像以上に多くの出展があり、驚きました。MEATLESS FUTURE社の植物性の餃子を食べたらとても美味しかったです。
今回のイベントに限らずですが、アメリカの街中を歩いてもアジアの食の人気はますます高まっていると実感しました。サンフランシスコにも行きましたが、アジアンレストランが至る所にありましたね。
梁:アジアの方でも入りやすいですし、毎日ファーストフードを食べるのに抵抗がある人でも暮らしやすいと思います。
有馬:でも高いんですよね…。ラーメンは1杯20ドルで、そこにチップが追加されるので、ラーメン一杯3,000〜4,000円くらいでしたね。
梁:暮らすのは、難しそうですね(笑)。
有馬:アジア食品の展示エリアでは、日本の大企業もいくつかブースを出していましたね。ジェトロさんも日本を代表して様々な会社の商品をPRしていて素晴らしかったです。すでに日本の食は世界で人気なので、もっと多くの日本企業が海外のビッグイベントに出展して自社商品をアピールしてほしいなと。
植物の代替肉
有馬:最後のトピックは植物の代替肉です。梁くんと3日かけて約3,000ものブースを渡り歩いてきましたが、日本の代替肉の印象はいかがでしたか。
梁:結論から言うと「日本の企業は間違いなく世界で戦える」ということ。売り方などに課題はありますが、商品の質という点では圧倒的に世界トップクラスだと思います。
有馬:たしかに日本食に慣れてしまっている私たちの舌からすると、海外の商品は正直美味しいとは感じにくいですよね。代替肉の大手企業のブースにも寄ったのですが、日本の商品のほうが断然美味しかったです。
ただ、やはりいずれにしても本物のお肉と植物肉を比較すると別物のように感じてしまいます。なので、無理にお肉に似せようとするよりも、植物肉は植物肉として美味しさを追求することが大事だと思いました。また、肉単体での勝負より、ホットドッグやタコスなど他の食品と一緒に食べる形にすることで、より美味しく食べてもらえるとも思いました。
味以外の観点で言えば、日本企業はマーケティングが課題になると思います。ブース一つとっても、アメリカのブースではまるでお店に入っていくかのような特別感が演出されていましたよね。
梁:私も海外のブースはとても面白くてわくわくしました。入りたい、試してみたい、と思わせる手前の演出が上手でした。
グローバル進出の鍵は「視覚的な魅力」と「地球規模のストーリー」
有馬:大きく5つのトレンドに分けて話しましたが、梁くんはイベント全体を通してどんな印象を持ちましたか。
梁:「いかにストーリーで差別化していくか」が重要だと強く感じました。日本の企業は総じて味のレベルは高い一方で、海外展開に向けては伝え方や見せ方を改革していかないと現地企業と戦いづらいかもしれません。
逆に言えば、そこさえクリアできれば絶対に勝てると思うので、日本のフードテックへの期待も高まりました。
有馬:そうですよね。アメリカの人たちは、商品の質そのものよりも、「どんな原料を使い、それはなぜか」というストーリーを重視しています。特に今は「サステナブルな食材を使って地球を救う」といったストーリーが世界では好まれやすいため、アジア圏も商品の質を高めるだけでなく、ストーリー作りにさらに力を入れることで世界に波及していきやすいと思います。
あとは、「ビジュアルのインパクト」にも大きな違いを感じました。北米や欧州系企業のブースは、アジア系企業のブースに比べてとてもきらびやかでキャッチーなんですよね。そのため、日本を含めアジア系のブースはどうしても地味な印象になりがちです。
梁:こぢんまりとしていたので、もっと表に出ていっても良いなと思いました。
有馬:そこも大きな課題の一つだと思っています。どんなに美味しくても、キャッチーでなければお客様には届きませんから。
梁:「味以外の大切さ」を肌で感じましたよね。
有馬:逆に言えば、アメリカのスタートアップはブランディングやマーケティングを早期から強化していますが、味など商品の質を追求するほうがよっぽど負担は大きいですよね。つまり、すでにその品質を担保できている日本の企業は優位性があると思います。
日本のフード業界の皆さんにも今回のような海外のイベントに出展してほしいですし、世界の最先端に触れていただけたらと思います。私たちは来年も参加する予定で、場合によってはツアーを開催するかもしれないので、一緒に回りたい方はぜひお声がけください!
梁:最後までお読みいただきありがとうございました!