空気を資源に変える!光合成細菌の研究者(京都大学教授)兼 Symbiobe創業者の沼田先生に迫る|DEEP TECH PIONEERS

シード期のディープテック・スタートアップに投資をするベンチャーキャピタルのBeyond Next Venturesがお届けする「世界を変えるディープテック」シリーズ。事業化を目指す研究者をゲストに迎え、キャピタリストとの対談形式でその研究の魅力や事業化エピソードを掘り下げます。

第1回目のゲストは、京都大学の教授であり、光合成細菌の応用を通じて空気の資源化に挑むべくSymbiobe(シンビオーブ)株式会社を創業した沼田圭司さんです。

起業を考えている研究者の方や、研究シーズとの連携を模索している企業の方は、ぜひご覧ください。

「海外の資源に依存しないバイオ産業」を目指し起業

ーまずは沼田さんの経歴を聞かせてください。

私は理化学研究所を経て、現在は京都大学で研究をしています。理化学研究所にいた時から高分子の構成や分解の研究をしており、特に生物を使って高分子を作る研究をしてきました。

その研究を基に2021年にSymbiobe(シンビオーブ)株式会社を立ち上げ、CTOを務めています。

ーSymbiobeの事業の内容も聞かせてもらえますか?

私たちは空気を資源化する研究の事業化を進めています。海の中で二酸化炭素や窒素を吸収しながら増殖する紅色(こうしょく)光合成細菌と呼ばれる細菌を使い、化学肥料やたんぱく質でできた繊維などの素材を生み出そうとしています。

今はバイオマスを利用する企業が増えていますが、そのバイオマスもほとんどは海外から輸入しているもの。それでは輸入しているものが石油からバイオマスにシフトしたにすぎません。国外資源に依存せずにバイオ産業を立ち上げられないか、という想いから事業化を始めました。

ー沼田さんは他にも様々な研究をなさっていますが、なぜその研究を事業化しようと思ったのか教えてください。

もともと紅色光合成細菌の研究は、JST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)主催のERATOというプロジェクトのテーマの一つでした。ERATOでは4つの研究をしており、他の3つの研究はプロジェクト後の進め方が明確になっていたものの、紅色光合成細菌の研究はどうするか決まっておらず。

そこで、研究成果を社会実装するためにSymbiobeを立ち上げたのです。ちょうど私が京都大学に着任し、大学のベンチャー支援の方たちに「起業に興味ありませんか」と聞かれたタイミングでもありました。

研究を蔑ろにはしたくなかったのでCEOになるつもりはありませんでしたが、同世代の先生たちが起業する姿を見ていたので起業には興味があったんです。そこで、知り合いにお願いしてCEOになってもらい、私はCTOとして携わることにしました。

研究とビジネスの両輪で「窒素からの物質化」を目指す

ー起業する上で大変だったことがあれば教えてください。

特許を移す事務作業が大変でした。起業したのは京都大学に移った直後だったのですが、関連する特許をほとんど理化学研究所で出していたので。

それでも、当時からこまめに特許を取っていたのは、起業に大いに役立ちましたね。欲を言えば、共同研究先の企業が「事業に使わないから」と特許をとらなかった研究もあり、それらも特許をとっていれば今の事業に使えたのにな、という後悔もあります。

ー現在は研究と事業を両立させていますが、大変なことはありますか?

業務量のバランスをとるのが難しいですね。研究も事業も、それぞれ研究費や事業資金を投資してくれている方がいます。どちらを疎かにしても、それぞれの方々に申し訳ないため、どちらでも結果を出さなければなりません。

一番大切なのは研究ですが、その社会実装をするためにもビジネスが大切で、そのバランスをとっていくのにまだ苦労しています。

ー今後、会社として成し遂げたいことを教えてください。

現在は二酸化炭素から物質化するプロセスしか実用化できていないため、今後は窒素から物質化するプロセスを実用化したいと思っています。窒素から物質化さえできれば、そこから新たな事業を生み出せるパートナー企業は必ず現れるはずです。

まずは「空気からものを作る」という入り口を作ることで、事業の可能性を広げていきたいと思います。

起業へのハードルを下げたのは、周りに起業家がいる環境

ー周りに起業する研究者が多いと話していましたが、その影響を受けたと思いますか?

大きく影響を受けたと思います。周りに起業する人が多かったからこそ、自然と「起業」がキャリアの選択肢に入っていたし、いざ起業の話をもらった時も違和感なく進められました。

ただし、起業することによって研究内容に対して風評被害が起きるのは心配でした。起業家の振る舞いによっては、研究へのイメージが悪くなるケースもあるので。そのため、起業家としての振る舞いにも気をつけています。

ー日本は「基礎研究が優れているけど実用化が弱い」と言われることもありますが、沼田さんの印象も聞かせてください。

確かに日本人は新しい発見をしても、それをどう使えばいいかわからずにいるケースは多いかもしれません。それは実用化を視野に入れて研究していないからだと思います。

そのため、私は「これができたら、こんな社会になるだろうな」と実用化された社会をイメージしながら研究を進めてきました。今の事業も「空気からものを作って、使い終わった元に戻る」というイメージから研究をしてきたので、ビジネスとしても発展しやすいと思います。

ー最後に起業を志している研究者の方々にメッセージをお願いします。

現在、起業に興味があって悩んでいる方は、ぜひ有馬さんのような投資家でもいいので、一度相談してみるといいと思います。私は京都大学のベンチャーサポートに相談したことで全てが動き出しました。

起業にリスクはつきものですが、人生経験としては面白いと思うので、少しでも検討している方はぜひチャレンジしてみてください。

最後に

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    BRAVEとは:大学・研究機関で培われた研究成果の事業化を推進する約2ヶ月間のプログラム。書類選考/審査および経営人材候補とのマッチング/チーム組成を経て、事業化を目指す。締めくくりとなるDEMO DAYでは、資金調達などの機会を勝ち取るために投資家や事業会社に対しプレゼンを行う。https://beyondnextventures.com/jp/incubation/brave/
Akito Arima

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