コンサルティング業界出身者がクライメートテック企業のCOOになった理由|DEEP TECH PIONEERS

シード期のディープテック・スタートアップに投資をするベンチャーキャピタルのBeyond Next Venturesがお届けする「DEEP TECH PIONEERS」シリーズ。BNVメンバーがそのディープテックの魅力や起業ストーリーを、研究者・起業家・経営者にインタビューする企画です。

初回は、約9年にわたるコンサルティング経験を経て、2021年に環境に優しいインクジェット印刷基板を製造しているエレファンテック株式会社に入社し、現在はCOOとして活躍されている小長井氏にインタビューを実施しました。

ディープテック・スタートアップに「専門外から」飛び込んだ小長井さんに、キャリア選択の背景、活躍するための道筋、やりがいなどについて伺います。

プロフィール

小長井 哲|執行役員COOエレファンテック株式会社

2013年6月
EYアドバイザリー株式会社(現EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)入社
2016年5月
株式会社経営共創基盤入社
2020年1月
コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所に派遣
2020年6月
株式会社経営共創基盤復職
2021年10月
エレファンテック株式会社 入社
2022年7月
エレファンテック株式会社 執行役員COO就任

「新しい産業を創れる」ディープテックの魅力


ーまずは小長井さんが転職を考えたきっかけを聞かせてください。

事業会社での経験を積みたいと思ったからです。前職ではコンサルティングをしており、直前にはとある大手メーカー様の会社全体を改革するという壮大なプロジェクトにアサインされていました。経営層に伴走しながら、中期経営計画をはじめ、人員計画の策定から実行までを行う巨大プロジェクトでした。

実はそのプロジェクトの途中で、コンサルタントとしての限界を感じたんです。事業会社での経験がなかったので、経営層にかける言葉も論理的には正しい事を言えたとしても、情理の部分までサポートとすることが困難だなと感じるようになり…。これまで当事者になったつもりで向き合ってきたのですが、どうしても超えられない壁があって。

より自分を成長させるために事業会社での経験が必要だと思い、転職活動を始めました。

ーその候補先にディープテックスタートアップが浮上した背景は何だったのでしょうか。


1つは、製造領域での経験を活かせると思ったこと。私は製造領域での案件を任されることが多く、そのうち「ものを作って付加価値をつけて提供する」というビジネスに惹かれていって。ディープテックスタートアップの中でも、エレファンテックなら、私の知見を活かせると感じました。

2つめは、新しい産業を創りたいと思っていたからです。私はもともと途上国の発展に興味があって、そのためには新しい産業を作ることが大事だと思っていました。しかし、私はこれまでのキャリアで既存事業の立て直しや成長に貢献してきたものの、新しい産業を作った経験はありません。ディープテックスタートアップなら、新しい産業を作れると感じました。

そして最後は、せっかくチャレンジするなら、しっかり経営に携われる会社で働きたいと思ったから。スタートアップならそのような機会もあると思い、ディープテックスタートアップに絞って転職活動を始めたんです。

ー専門分野ではない事業への経営参画に抵抗はありませんでしたか?

コンサル時代、プロジェクト開始時から担当先企業の技術に関して深い理解があったわけではありません。それでも、事業経済性という視点で、各企業の事業特性を踏まえて、当該市場で各社固有の勝ちパターンを見つけるということをコンサルタントしては必ず毎回のプロジェクトで考え抜いてきたので、その経験は活かせると思いました。と思っていました。

プロジェクト開始前に業界のサプライチェーンを読み解きながら、どういう工程を経てお客さんに価値を届けるのか考え、専門書を10冊ほど読み漁ればビジネスの概略は理解できるようになります。そうやって知識の不足を補ってきたので、ディープテックスタートアップでも通用するという感覚はありました。

「技術とビジネスのバランスが決め手」エレファンテックにCOOとして参画を決意


ーディープテックスタートアップに絞って転職活動をする中で、エレファンテックを選んだ理由を教えてください。

市場独占できる技術と、事業経済性を正しく考えた上で、ちゃんと付加価値分の利益を出せるビジネスモデル、尚且つ人類の課題解決を達成できるというところに惹かれたからです。ビジョンに共感したのはもちろんですが、加えて経営陣がビジネスについて深い理解がありました。ディープテック領域では、素晴らしい技術を持っているにもかかわらず、ビジネスへの理解が浅いために事業を成長させられていないケースも少なくありません。

その点、エレファンテックはビジネスの進め方にも納得できましたし、地球規模で意義のある事業を展開しており、ジョインすることを決めました。

ービジョンと技術、そしてビジネスモデルを総合的に見ていたのですね。

他社も含めてディープテックを広く見て次のキャリアを考えた時、まず独自の固有技術の有無と、創業者が人類の課題を解決したいという崇高なビジョンがあるかを重視してお話しを伺っていました。仮にビジネスモデルがまだ固まっていなかったとしても、そこは一緒に考えればいいのではと考えていました。

その点、エレファンテックCEOの清水は、自身でもしっかりビジネスが考えられる上に、他の人に任せられるだけの器量があります。清水に限らず、経営陣・社員全員が感情に左右されずディスカッションできるカルチャーがあり、仕事がしやすいと感じました。

ーカルチャーと言えば、エレファンテックでは「Elephantech Way」と称して、しっかりとカルチャーを明言していますよね。小長井さんが実際に働いてみて、魅力的に思うカルチャーがあれば教えてください。

盛んにポジティブなフィードバックをするカルチャーです。誰かがいいことをした時にSlackで「〇〇さんがこんなことをしていました」という報告がものすごく多く、気持ちよく仕事ができます。

そのようなカルチャーがあるからなのか、組織の拡大に伴って人事制度を整備したときに、会社全体で大きな混乱はありませんでした。これもフィードバックのカルチャーが浸透していたからだと思っていますし、今までのフィードバックの内容も参考にして整備したからこそ、社員の理解が高かったと思っています。これまでの経験では人事制度を改定すると従業員の退職などが起こりやすかったのですが、誰一人辞めなかったことはいい意味でのサプライズでしたね。

ー仕事に前向きな方が多いんですね。

そうですね。研修の様子を見ても積極的に発言する人が多いですし、アンケートも回答率が高いです。20~30代の社員はもちろん、40~60代の社員も皆エネルギッシュです!笑 最近では「社員のモチベーションをどう上げるか」というテーマの本や研修が多いですが、エレファンテックはそれらが不要なほど仕事に前向きな人が多いです。

柔軟性と人柄。今後の成長を担う人材の見極め方


ー小長井さんも採用に関わっていらっしゃいますが、応募者のどのような部分をチェックしていますか?

柔軟に物事を考えられるかどうか」を見させていただいています。私たちのビジネスは不完全で、今でも大小含めてピボットを繰り返しながら進んでいます。そのような状況下で、過去の経験に因われていては、パフォーマンスを発揮できません。

そのため、面接においても、過去の経験だけで判断しているのか、経験をベースにゼロベースで考えられているか、はチェックしています。特に私が関わるのは部長クラスの採用なので、これまでのご経験を活かしつつも、一定アンラーンができ、柔軟に考えられる力があるかを特に見ています。

あとは、「お人柄」もよく見させていただいています。例えば、面接の時に挨拶しない方は、どんなに優秀であっても採用することはありません。とくに今の組織がとても人柄のいい方ばかりなので、そのカルチャーにマッチする謙虚さや人に対するリスペクトを持っている方を採用しています。

ー100人規模の組織にまで成長していますが、採用方針はこれまでと変わったりするのでしょうか?

国内の人材採用に関しては、そこまで変わらないと思います。これまで採用してきた方々が、しっかり会社のコアとなってカルチャーを醸成してきたので、それにマッチする方々をこれからも採用していきたいですね。

ただし、今後は海外にも積極的に進出していく予定なので、グローバル人材の採用は強化していきます。日本語が通じない海外人材を採用し、国内社員含めた弊社に無事オンボーディングさせられるかが、次の組織成長に繋がると思っています。

ー最後に、これからどんな人材に入社してほしいですか。

大きな夢を持っている人」です。それを体現するフィールドがエレファンテックだったら嬉しいですし、参画後に別のフィールドを見つけて卒業されても構わないと思っています。総和として、日本及び人類の課題解決が進むことが最も大事だと個人的には思っています。もし将来自分で起業したいなら、その修業の場として使ってもらっても構いません。

特に「将来ディープテックで起業したい。でもどうすればいいかわからない」という人には、ぜひエレファンテックで修行してほしいですね。

ー小長井さん自身は、どのような夢をもっているのでしょうか。

直近は事業課題をちゃんと解決してステークホルダーに恩返しするのが目標ですが、私個人としては自分が当事者となってテクノロジーで人類の課題解決に貢献したいです。そして、できるだけ多くの「日本発」で、グローバルで戦えるビジネスを生み出したいと思います。エレファンテックも、ゆくゆくはインクジェット印刷基板以外の事業も展開して、日本発のグローバルなクリーンテックカンパニーとして成長させていきたいです。

エレファンテック株式会社の公式HP:https://www.elephantech.co.jp/

最後に

Beyond Next Venturesでは、ディープテックスタートアップに関心がある方とのカジュアル面談を実施しています。エレファンテックのようなクライメートテックをはじめ、DTx(デジタル・セラピューティクス)等の医療・ヘルスケア、創薬・バイオ、アグリ・フード、AI、宇宙など様々なスタートアップのCXOポジションの紹介、また、経営者を目指す方に向けて、研究者との共同創業を実践するプログラム「INNOVATION LEADERS PROGRAM」への参加推薦などを行っています。少しでもご興味のある方は、ぜひご連絡ください!

Hiroki Mikuni

Hiroki Mikuni

Manager