三國:こんにちは、三國です。私はBeyond Next Venturesで出資先スタートアップの採用支援を行っています。今回は、年々採用ニーズが増す「エンジニア」の中でも、グローバルなエンジニアチームで開発をドライブするスタートアップ3社をお呼びし、開発に向けた組織マネジメント、エンジニアの採用、そしてグローバルビジネスに関わる動機などを伺いました。
「グローバルなチームで働いてみたい」「海外ビジネスにチャレンジしてみたい」という方や、「グローバルな環境で活躍できるのだろうか」と少し不安に感じているエンジニアの方にもぜひお読みいただきたい内容です。
グローバルなエンジニアチームで問題解決に挑む3社のご紹介
マレーシアでECビジネス展開するSECAI MARCHE
矢島:SECAI MARCHE(セカイマルシェ)は、生産者と消費者をダイレクトにつなぐECプラットフォームを提供しています。現在はマレーシアでビジネスを展開しており、ECを通して新鮮な食品を新鮮なまま消費者の方にお届けしています。特徴は、注⽂を受けてから物流までを⼀気通貫で管理している点です。東南アジアでインフラ整備をしながら事業展開することに注力しています。
登壇者プロフィール
株式会社SECAI MARCHE
R&Dグループ マネージャー
矢島 匡人 氏
東京電機大学大学院情報メディア学専攻修了後、新卒で凸版印刷株式会社に入社。その後、株式会社リバークレインに入社。フルスタックエンジニアとして開発業務に従事。当時はまだ珍しかった越境ECサイトプロジェクトの責任者を担当。越境ECサイトリリース後、越境ECビジネス運営責任者に就任。その後、中国・台湾・ベトナム・タイなどの各国の現地EC立ち上げのサポートをし、2022年から現職のSECAI MARCHEに転職。R&Dグループマネージャーに就任、現在に至る。
AIの力で言語習得を加速させるSpeakBUDDY
添野:SpeakBUDDY(スピークバディ)は英語学習に関する複数のサービスを展開しています。英会話のアプリ事業、英会話のコーチング事業、英語学習に関するQ&Aメディアの運営を軸としています。その中での主⼒が「AI英会話 スピークバディ」です。
第二⾔語習得理論に基づき、スマートフォンに向かってAIと話すというアプローチを設けているので、「対⼈の英会話は恥ずかしい」「英会話学校だと続けられなかった」というユーザーさんに特に喜んでいただいています。今開発チームは20⼈弱で、そのうち70%ほどがエンジニアです。
登壇者プロフィール
株式会社SpeakBUDDY
App Division|App Group|Growth Lead
添野 紘生 氏
法政大学応用情報工学科在学中に株式会社スピークバディ(当時:appArray株式会社)にiOSエンジニアインターンとして入社。インターンとして在籍中に分析業務なども担当し、2018年に正社員として新卒入社。入社後はエンジニアリングと兼業でアプリグロースやマーケティングなどに従事した後、現在はスピークバディアプリ事業のグロースリードとして、KPI管理やユーザー行動分析からグロース施策の立案などを担当。また現在も開発リソースが不足する場合はiOSエンジニアリングにも従事。
難易度の高いソフトウェアテストの自動化に挑むAutify
佐伯:Autify(オーティファイ)は、サンフランシスコで創業し、AIを活用してノーコードでソフトウェアテストを⾃動化するプラットフォームを提供しています。従来のソフトウェアテストは、全世界の約3/4の企業が人力で行っており、メンテナンスコストの削減、⾃動化の難易度の⾼さという課題は全世界共通のものでした。この課題に対して、弊社はノーコードかつ⾃動的にメンテナンスができるソリューションを提供しています。組織は70名程で、半分強がエンジニア、さらにそのうち6割は海外のメンバーです。社内公⽤語は英語で、ダイバーシティに富んだ組織構成になっています。
登壇者プロフィール
Autify, Inc.
HR
佐伯 叡一 氏
法政大学キャリアデザイン学部を卒業後、新卒でIT業界に特化した転職エージェントに入社。その後、事業会社にてエンジニア・デザイナーを中心とした採用や、キャリアコーチングの事業開発を経て、2021年に独立。複数のスタートアップの採用やブランディング、事業開発に携わる。2022年4月に元々支援先だったオーティファイ株式会社にHRとして参画。並行して複数社の採用コンサルティングに従事。
グローバルな組織づくりには「言語」と「文化」を意識
三國:まずは、グローバルなエンジニアの組織作りで苦労したことをお伺いできますか?
矢島:私たちはエンジニア3名体制で、もともと知り合いでした。⾃分の知り合いであれば能⼒や経験もある程度把握していまするため、⼿取り⾜取り指導しなくてもいい⾛り出しを切れます。一方、もっと組織を拡大するにあたり、まだ知名度が低いため⼈を集めるための情報発信に力を入れなければと思っています。
三國:スタートアップは⼼が許せる⼈からメンバーを集めていくことがセオリーなのかもしれませんね。SpeakBUDDYの添野さんは、どのように組織作りをされて、どんなことにご苦労されましたか?
添野:今は採用も進み、開発チームは英語と⽇本語のネイティブスピーカーが5:5ぐらいで混ざっています。グローバルチームの一つの壁は「言語」ですが、開発チームではその場に日本人しかいない場合は日本語ですが、基本的に英語で会話しています。
デザイナーやフロントエンジニアなど、ユーザーの⽬に触れる部分を担当するメンバーは、ある程度の⽇本語スキルや英語スキルを⾒て採⽤しなければいけないので、少しハードルが高くなっていますね。一方、サーバーサイドエンジニアは、使用言語に限らず技術⼒さえあれば積極的に採⽤しています。
とはいえ、より多くの方に活躍してもらえる組織にしていきたいと考えています。会社全体として、言語スキルは入社した後に補うことを前提とすることで、誰もが物怖じせずに安心してコミュニケーションをとることができ、言語スキルをさらに伸ばしていけるような組織を目指しています。
海外メンバーとのコミュニケーションの壁
三國:Autifyの佐伯さんは、70⼈の会社組織でかつエンジニアの半分が外国⼈というチームにいらっしゃって、組織作りで苦労されていることはありますか?
佐伯:⽂化的な違いが⼀番問題になりやすいと思っています。⽇本⼈は以⼼伝⼼みたいなところがあるけれど、海外のメンバーは⾃分の意⾒をしっかり⾔って、テキストで必ずコミュニケーションを取ろうとする⽂化が強いです。そんな中、コロナの影響で強制的にテキストコミュニケーションを強いられる環境ができあがり、それが強化されていきました。なので⽇本⼈でも、テキストで必ず⾃分の意⾒を伝えるということがベースになってます。この過程を経て、とても良い⽂化を作ることができたと思っています。
三國:なるほど。今後さらに100人規模など組織が拡大したときの懸念事項などはありますか?
佐伯:⽇本⼈と比べると海外の人は⾃分の意⾒をしっかり主張するし、それこそサービスに対してこだわりが強いほど⾃分の意⾒も強くなる傾向があります。⽇本⼈は、トップの方針になんだかんだ従う節がありますが、海外の人はそこまで迎合しません。そのため、技術力の高いスペシャリストだけが⼊ればいいわけではなく、ちゃんと対話するマネージメントの必要性を感じて、その体制を少しずつ作っていきました。今後100⼈を超えたときを思うと、なおさら早めに準備して良かったと思っています。
グローバルチームならではの開発の進め⽅
三國:グローバルチームならではの開発の進め⽅で難しさなどはありますか?
佐伯:まず全てのミーティングは全部録画し、議事録はNotionにまとめています。情報量は多くなりますが、自分に必要な情報を必要なときにとりにいく形で進めています。あと法律的なものや、労務的な観点で理解にずれが起きてはならないものに関しては⽇本語で補⾜も全部⼊れてます。
添野:まず物事の伝え⽅をストレートに、ということを心掛けています。⽇本⼈のほうがより気を使った回りくどい⾔い回しをするので、それを英語でそのままやると外国⼈にはまず伝わりません。ストレートなコミュニケーションは忖度なく本質的なので、かなり効率的な開発現場になっていると思います。
また、クリエイティブなプロダクトを⼿がけている分、多種多彩なメンバーが揃っているので、役職に関係なくフラットに建設的にコミュニケーションをとるようにしています。マネジメントを強くするよりは、個々人のクオリティを上げるところに重きを置いています。
三國:70⼈規模になると統制を利かす必要があり、20⼈規模だと逆に⾃由に裁量を持ってできる環境が必要だということですね。
グローバルビジネスに関わりたい!と思ったきっかけ
三國:続いて、グローバルにビジネスを進めていくにあたって、メンバーのモチベーションはどこにありますか?
矢島:SECAI MARCHEでは産直の野菜を取り扱っていることもあり、野菜を育てること⾃体に興味があり、かつ国内のみならず海外で価値を⽣み出したい、という強い思いのあるメンバーが集まっています。東南アジアではチャレンジする余地がかなりまだあるので、そこがモチベーションになっていますね。また物流は古くから存在しますが、そこを最新の技術・手法に置き換えることでイノベーションを興す楽しさもあると思います。
添野:SpeakBUDDYでは、AI技術に惹かれて⼊社するメンバーもいますが、それ以上に、「真の言語習得を実現し、人生の可能性と選択肢を広げる」というわが社のミッションに共感して入社するメンバーが多いですね。外国⼈の⽅は、日本の文化に惹かれ興味を持ち、⽇本語の勉強に取り組んできたメンバーも多く、⾔語習得の難しさを理解して、その課題を解決したいという思いで入社されています。
佐伯:Autifyのプロダクトは、エンジニアであれば誰しも感じる”非効率”を解消するソリューションなので、プロダクト自体がモチベーションになっていると思います。「自分自身が課題を感じていたからこそ、それを解消できるサービスはクールだね」と。
あと、海外のメンバーの中には、「⽇本⽂化めっちゃ好き!アニメ・漫画⼤好き!」だけれど、⽇本語の壁によって⽇本企業での就労が厳しいかも…という時に僕らを⾒つけてくれる人もいます。逆にグローバルで働きたい⽇本⼈からすれば、外国人とは英語で、日本人とは日本語でというように、仕事をしながらビジネス英語レベルまで上達させることができることにも、副次的なモチベーションがあると思います。
エンジニアがグローバルに活躍するための要件
三國:最後に、グローバルチームで活躍する⽅々の要件について聞かせていただけますか?
佐伯:前提として、英語でコミュニケーションが取れるか、多様なメンバーとコラボレーションできるか、は要件に入ります。そして、Autifyでは全社員が本気でグローバルでNo.1をとるつもりで働いています。一方で、ちゃんと地に足をつけてタスクやミッションを達成していく必要があるので、情熱と着実な行動力がある⼈を求めています。
添野:まず第二⾔語に物怖じしないで前向きにチャレンジできる人が活躍しやすいと思います。あとは、外国の方々に負けない主体性とそれを表に出せる積極性を持った方はグローバルな環境下でも強いと思います。
矢島:SECAI MARCHEは今マレーシアで事業展開していますが、現地に⾏くと⽇本で当たり前のようにできていることが出来ていなかったりします。その未知の分野に対して、⽇本の仕組みやいいところを他国に展開して問題を解決したいと思っているので、そこへの興味関心は欲しいですね。あとは、創業したばかりでまだ色々と散らかっているので、カオスな環境を⾯⽩がれる⼈も活躍できると思います。
三國:共通する部分もありつつ、チャレンジするフィールドや会社のフェーズが違うと求める⼈材というのが少しずつ違うんですね。
グローバルなエンジニアチームで挑戦したい方へのメッセージ
三國:最後にそれぞれ皆さまから⼀⾔ずついただければなと思います。
矢島:SECAI MARCHEはまだ規模が⼩さいので、より⼤きくなることを⽬指して、東南アジア各国に進出していきたいと思っています。まだ駆け出しで、これから挑戦される方と一番近い立場なので、私の話が参考になれば嬉しいです。
添野:SpeakBUDDYは、今後海外展開を⽬指しています。日本以外の人が英語を学べるコンテンツを作ったり、日本人が英語以外の言語を学べるコンテンツを作るなど、現在のプロダクトを起点にさまざまな方向性での拡張可能性を秘めていると感じています。ご興味がある方はぜひ一緒に働きたいです!
佐伯:「ビジネスをやるならグローバルで考えるのは当たり前」みたいな⼈が増え、物事を⼤きく捉えて世界で活躍する企業・個人が増えることを願っています。一緒にイノベーションを興していきましょう!
三國:そうですね。弊社もインドのベンガルール市に子会社をつくり、出資先スタートアップ・日本企業のインド進出の支援や、子会社で日本人のインターンを受け入れるなど、企業や個人の海外進出を後押しする取り組みを強化しています。グローバルにチャレンジする⽅々がもっと増えることを願っています!
もし、今回ご登壇いただいた3社にご興味がある方、または、スタートアップでグローバルに働きたいというエンジニアの方は、ぜひご連絡いただければ幸いです!