シードラウンドでの資金調達の方法を解説

スタートアップが成長するのに欠かせない資金調達。今回はいくつかある資金調達ラウンドの中でも、創業初期の調達にあたる「シードラウンド」について、その概要や主な資金調達先を紹介していきます。

シードラウンドとは

シードラウンドとは、法人化後の「シードステージ」のスタートアップによる資金調達ラウンドのことを指します。シードステージとは、ようやくビジネスモデルが定まり、法人を設立し実際にビジネスを始める前の段階です。

具体的には、本当に自分たちのアイデアがビジネスとして成立するのか、モックアップやプロトタイプなどを使って、ユーザーが価値を感じてくれるかを実証していきます。シードステージの資金調達額の相場は数千万円程度が一般的といわれています。

【出典】経済産業省 令和元年度 中小企業実態調査事業(エンジェル税制活用による地方ベンチャー企業活性化に係る調査委託事業)報告書 p.22 図表Ⅲ-8

ただし、ビジネスモデルによってはこの限りではありません。IT系のスタートアップに比べて創業初期に必要となる金額の大きい研究開発型スタートアップでは、シードラウンドで1億円以上の調達が必要な場合もあります。

ディープテック領域や大学発ベンチャーへの出資を主軸とするBeyond Next Venturesでは、そのような研究開発型スタートアップの資金需要に見合うため、シード期の初回出資額の幅を数百万円~約4.5億円に設定しています。

シード期における代表的な資金調達先

いざ資金調達をしようとすると多くの資金調達先候補があるかと思いますが、ここではシードラウンドでの資金調達先の代表的な選択肢を紹介します。特に研究開発型スタートアップは必要となる資金も多いため、銀行などの借入よりもグラントやエクイティをメインとした資金調達となりやすいのが特徴です。

グラント(助成金)

研究者等を対象に研究開発課題を募集し、採択された課題に研究資金を提供する制度です。有名なものとしてNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が出すグラントがあります。

NEDOは産業技術力の強化とエネルギー・地球環境問題の解決をミッションとして産官学を跨いだイノベーション・アクセラレーターの役割を果たしており、資金提供だけでなく起業家を支援する様々なプログラムを行っています。

弊社でも事業計画の相談に乗らせていただく際には、どのグラントに出せるのかも含めて一緒に検討していくことが多く、研究開発型スタートアップではまず検討すべき調達先候補となっています。

NEDO以外にもグラントを出している代表的な組織を以下に挙げます。

・AMED(日本医療研究開発機構)
国が定める「医療分野研究開発推進計画」に基づき、医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療等6つの統合プロジェクトを中心とする研究開発を推進するための事業を運営。

・JST(科学技術振興機構)
START(研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム)を運営。ベンチャー起業前段階から事業プロモーターのプロジェクトマネジメントのもとで事業化構想を策定し、知財戦略・事業戦略を構築し、市場や出口を見据えて事業化を目指す。

他にもグラントを提供している組織は数多く存在しますので、e-GRANTなどのグラント情報が検索できるサイトで確認してみてください。

独立系VC(ベンチャーキャピタル)

最も一般的なエクイティでの資金調達先がVC(Venture Capital:ベンチャーキャピタル)です。未上場のスタートアップに出資することで株式を取得し、IPOを果たした際の値上がり益の獲得を目指す投資会社のことです。

VCは設立するファンドに対して金融機関、機関投資家や事業会社等から出資をしてもらい、そのファンドを源泉として各スタートアップへの投資を行います。投資した中でいくつかの会社がIPOを果たすと、ファンド自体の収益が最大化されます。

近年、国内のVCが増えたことに加え、海外のVCが国内のスタートアップに注目し始めたことで、VC同士の競争も激しさを増しています。その結果、単に資金を提供するだけでなく、出資先への人材紹介など手厚いサポートを提供するVCが増えてきました。

弊社では、起業を予定している研究者の方と創業に向けた準備に並走したり、なかなかご自身のネットワークの中では見つけづらいビジネスパーソンとのマッチングの機会を提供し、経営チームの構築をサポートしています。

また、各VCが強みとする投資ステージや投資領域を把握するのも重要です。シードラウンドを実施するのであれば、シードステージから投資をしているVCを探しましょう。各社のHPなどで情報が見れるはずです。

また、投資領域についても確認しましょう。各社のHPではこれまでの投資先企業を一覧で表示しているところが多いので、自分と似たような属性のスタートアップへの投資実績があるか、見てみてください。

特に大学発ベンチャーなどの研究開発型スタートアップは、ネット系スタートアップと比較するとEXITまでの期間が長く、資本政策や資金調達、知財戦略など様々な点で投資家側にも専門性が求められます。そのため、その領域への経験が豊富なVCをあらかじめリスト化しておくなどもいいですね。

【参考】NEDO「研究開発型スタートアップ支援事業/ベンチャーキャピタル等の認定」に係る認定VCの決定について

事業会社やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)

独立系VC以外で主な調達先となるのが事業会社、もしくは事業会社が運営するCVC(Corporate Venture Capital)です。独立系VCが取得した株式の値上がり益を目的にしているのに対し、CVCの主な目的は事業シナジーです。※事業シナジーを勘案しないで純投資を投資ポリシーに掲げるCVCも存在します。

そのため、出資先となるのは単に成長見込みがあるだけでなく、CVCを運営する母体企業との事業シナジーを生み出せるかが大きな基準となってきます。また、最近では事業構想を一緒に作り上げていくアクセラレータープログラムを開催する大企業も増えており、採択されることで出資が決まるケースも一般的になりました。

CVCからの出資を検討する際は、紐づく事業会社との関わりも大きくなるため、資金の提供先としてだけではなく、事業パートナーとして本当に適切かも判断しましょう。仮に信頼できたとしても、自分たちの事業の幅が将来狭まってしまう可能性もなくはないので、慎重に検討する必要があります。

また、研究開発型スタートアップにおいては、自社の技術の開示やライセンス契約なども絡んでくることがあるため、検討してもらう段階から慎重に資料を開示していく必要があります。

大学および大学系ベンチャーキャピタル

最近では大学が子会社のベンチャーキャピタルを通じ、間接的にスタートアップへ出資するケースも増えています。また、大学と連携する「大学系ベンチャーキャピタル」と呼ばれるVCも多く設立されています。基本的には学内の研究シーズを活用して法人化した「大学発スタートアップ」が投資対象となります。

起業を推奨している大学ではこれらの出資だけでなく、学内にオフィスを設けたり、事業会社とのパイプ役を担ってくれるなど手厚いケースをしてくれることもあります。出資してもらえるのは大学発スタートアップに限られるものの、条件に該当する企業は優先して相談すべき調達先と言えるでしょう。

<代表的な大学系ベンチャーキャピタル>
・東大ICP(東京大学協創プラットフォーム開発株式会社)
東京大学100%出資のVC。民間企業の技術シーズをカーブアウトするシード投資にも積極的。カーブアウト、ジョイントベンチャー、プレシードベンチャー企業投資を目標としている。

・京都大学イノベーションキャピタル
京都大学100%出資のVC。他大学VCとの提携も積極的に行っており、東京工業大学関連ベンチャーキャピタルの「みらい創造機構」や広島大学のベンチャー企業を支援する「広島VC」との提携も発表。ファンド満期は一般的に10年程度のところ、2016年に組成した最長20年間で長期支援を可能にしている。

・慶應イノベーション・イニシアティブ
学校法人慶應義塾が設立したVC。慶應義塾大学の研究成果を活用したベンチャー企業の投資育成を通じて、大学の研究成果の社会実装を推進し、新産業の創出によって社会の発展に貢献することをミッションとしている。

資金調達検討先との進め方

実際に関心をもってくれた調達先が現れた際に、情報をより詳細に開示して条件を詰めていくことになります。ここでは資金調達の交渉で出てくる資本の話について簡単ですが触れておきます。

資本政策について

資本政策とは、事業をスムーズに進めるための資金調達と株主構成の計画をいいます。資金調達に向けてアクションを起こす前に、まずはそれぞれのフェーズにおけるゴールを設定し、それを達成するためにはどれくらいの資金調達が必要なのか、計画を立てておきましょう。実際に事業を進めていくと、計画通りに行きづらいため、都度柔軟に修正していく必要はありますが、計画があるかないかで動き方が大きく変わります。

研究開発型スタートアップは研究開発に多額の資金がどうしても必要になります。例えば製薬系のバイオベンチャーであれば、候補原薬の作成、対象候補疾患における非臨床試験、GMP製造のための資金調達など、マイルストーンごとに大体いくらかかるかを試算できるとよいでしょう。

株式の割当比率と調達金額

資金調達は金額が大きければ大きいほどいいという訳ではありません。出資してもらうということは、会社の株主になってもらうことにもなるので、持ち株比率によっては会社経営に対して大きな影響力を持つことになります。また優先株などの種類株式など、出資してもらう方法にも色々な仕組みがあります。出資してもらうことがお金以外で会社にどのような影響をもたらすのか、慎重に見極めましょう。

特にシード期においては後々で会社に参画してくれるメンバーに対してストックオプションのことも念頭において、例えばどのくらいの枠であれば株主総会での同意を得ないで付与して良いか、なども決めていく必要があります。

資金調達先は長く付き合うパートナー

最近は資金的な支援に加えて様々なサポートを行うVCが増えています。経営にプラスになるサポートをしてくれる一方で、自分たちの意向と食い違いが生じた場合には揉めるケースも少なくありません。健全な議論であればいいですが、それによって起業家のリソースが割かれてしまうのは誰の得にもはならないでしょう。資金調達先は株主、ひいては経営のパートナーになるという意識をしっかりもったうえで、納得して事業を進めていける相手を選びましょう。

Beyond Next Venturesより

Beyond Next Venturesは、大学発スタートアップやディープテック領域(研究開発系)に強い独立系のシードVCです。総額220億円のファンドを運用し、シードステージから投資を実行しています。現在シード期における資金調達先を探されている起業家の方や、起業を予定している研究者の方は、お気軽にご相談ください。また、資金調達の前段階における事業アイデアの壁打ちなどの相談も随時受け付けています。
お問い合わせ先:https://form.k3r.jp/beyondnextventures/contact01

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