採用プロが明かす、ディープテックスタートアップで活躍する人材とは

こんにちは、Beyond Next Venturesで出資先スタートアップの人材採用支援を行っている三國です。今年もエージェントの皆様向けに「ディープテックHR支援会」のレポートをお届けします。

今年はディープテックスタートアップにおける人材マッチング率を高めるために、UntroD(旧リアルテック)の池田さんとともに、ディープテックスタートアップで求められる人材や活躍できる人材について、採用の視点からお話しました。

プロフィール

池田真実

UntroD Capital Japan株式会社

池田真実

海外にてShared Service Centreの立ち上げ。経営企画としてBPOマネジメント、採用・育成・評価等を牽引し2年で100人規模へ。帰国後Startupにて人事の立ち上げに従事。前職でマザーズ(現グロース)市場へ上場。現在はリアルテックファンドにて投資先Value UpのためPeople分野にて支援。

三國弘樹

Beyond Next Ventures株式会社 投資部企画推進チーム マネージャー

三國弘樹

2012年4月 JAC Recruitmentに入社。 エグゼクティブ部門にてベンチャーキャピタルの投資先の経営幹部の採用に関わる。
2020年にBeyond Next Venturesに参画し、出資先スタートアップの採用支援をはじめとする組織成長支援を担当。

※所属・肩書はイベント実施日時点

ディープテックスタートアップの組織変遷

ディープテックスタートアップは、SaaS系スタートアップと比較すると研究開発に多くの資金や時間を要します。そのため、初期の組織づくりは少数精鋭で進められることが一般的です。

シードステージでは、経営陣自らがリファラルやネットワークを駆使して人材を集めることが多く、組織の多くをエンジニアが占める傾向にあります。また、この段階では技術的な知見だけでなく、ファイナンスや事業開発など、多岐にわたるスキルセットが求められます。

アーリーステージに進むと、組織は徐々に拡大し、文系出身者や異業種からの人材も活躍の場を見つけるようになります。ここでは、技術とビジネスの橋渡しが重要となり、多様なバックグラウンドを持つ人材が求められます。

ミドル・レイターステージになると、組織は個人最適から階層型へと移行し、その分野のスペシャリストの採用が進みます。IPOを目指す多くのスタートアップでは、高い専門性と経験を持つ人材が必要となります。

SaaSとディープテックの人材戦略、違いは?

SaaSスタートアップ出身者はディープテックスタートアップで活躍できるのか?」という質問を受けることがよくあります。SaaS業界で高いスピード感を持って業務を推進してきた経験は、ディープテックスタートアップでも大いに役立ちます。実際に、Beyond Next Venturesの出資先企業(国内約65社)においても、SaaS出身者がディープテックスタートアップで即戦力として活躍している例は数多く存在します。

ステージ別、求められる人材とは

①シード・アーリー期:「柔軟なイノシシ型」人材

このフェーズは、まさに組織組み立て期。創業者と最低限の数人のメンバーのみで構成されるケースが多く、事業モデルがまだ固まっておらず、仮説検証やピボットが頻繁に起こります。その中で求められるのは、柔軟性とスピード感を持って広範な業務を推進できる人材です。まさに、「猪突猛進」型とも言える「柔軟なイノシシ型」のような人材が求められます。

②ミドル・レイター期:「協調性のある百万馬力型」人材

組織拡大期であるこのフェーズでは、個々の専門性がより一層求められます。バックオフィスも充実してきて、人数も増加することから、組織全体の調和と共通の目標への貢献が重視されていきます。同時に、スタートアップ特有の俊敏さと柔軟性、そしてIPO準備に向けた強靭なメンタルも求められることから、「協調性も兼ね備えた百万馬力型」のような人材が求められます。

ディープテックスタートアップで活躍しにくい人材の特徴

ディープテックスタートアップは、研究開発に長い時間を要します。つまり、SaaSスタートアップのように早いサイクルで結果が見えるわけではないので、短期間での成果を求める人や、すぐに売れるプロダクトがない状況でフラストレーションを感じてしまう人には、少々ハードルが高いかもしれません。

そこで大事なのが、企業のビジョンや社会課題への共感度です。スタートアップが目指す未来や「これを解決したい!」という大きな使命にどれだけ心から共感できるかが、活躍のカギです。長期戦が得意で、ビジョンにワクワクする人材こそが、ディープテックの世界で活躍しやすいと言えるでしょう。

技術だけにフォーカスしない!ディープテック企業の理解の深め方

専属の人事担当者がいないディープテックスタートアップは、外部の採用支援会社の協力を得ることがよくあります。とくに、シード期からエージェントを活用するスタートアップも増え、VCから出資先企業にエージェントを紹介するケースも増えています。

ただ、エージェントの皆さんからは「ディープテックスタートアップの技術が複雑で、求職者に紹介するのが難しい」という声も多く聞かれます。実際、ディープテックスタートアップが取り組む技術は、現在の市場に存在しないものが多く、難解であることは確かです。

しかし、技術だけに焦点を絞らずとも、それ以外の要素から企業理解を深めることはできます。以下に5つの要素を記載します。

1.企業が解決したい社会課題とマーケットの規模

企業のビジョンや使命を明確にすることで、そのビジョンに共感する人材をマッチングさせることが可能になります。また、事業領域のマーケット規模を把握することで、その企業の成長可能性を判断することができます。

2.事業や技術がオンリーワンかナンバーワンか

技術かオンリーワンかナンバーワンかを理解することで、その技術が有する競争優位性を理解できます。そのためには、既存技術よりも優れているポイントを理解できれば、その企業の将来的な可能性を予測することができます。

3.事業の変遷(過去、現在、未来)

ディープテック企業が本当に成し遂げたいビジョンに対して、現在どのような事業に取り組んでいるのかを理解しましょう。現在の事業だけにフォーカスするのではなく、その先にある最終的なゴールや、これまでどのような事業変遷を辿ってきたのかを把握することで、企業の成長戦略や方向性をより深く理解することができます。

4.企業の成り立ち

どのようなメンバーが経営の中心にいるのかを把握しましょう。例えば、大学発スタートアップで経営者が教授の場合、基礎研究は進んでいるものの、ビジネスを牽引する人材が組織にとって必要なこともあります。

5.企業の3〜5年後を想像する

技術のブレイクスルーがどこにあるかを理解することが重要です。たとえば、量産がその企業にとってのブレイクスルーになる場合、量産への道筋が立っているか、量産に耐えうる技術であるかという視点で見ることができます。これらを把握することで、求人の背景も含めた企業への理解が深まり、ディープテックスタートアップと適切な人材のマッチング率が向上し、最適な人材を紹介しやすくなります。

 
ディープテックスタートアップの採用インサイト、いかがでしたでしょうか?ディープテック領域の労働市場をさらに活発化させていくために、VCとの協業に興味をお持ちの採用エージェントさんがいらっしゃいましたら、三國までご連絡いただけたら幸いです!

Hiroki Mikuni

Hiroki Mikuni

Manager