こんにちは!Beyond Next Venturesの有馬です。僕は27歳の時に総合商社からVC業界に転職し、キャピタリスト4年目になりました。今回、さらにVC業界やディープテック業界に貢献するべく、2022年10月からパートナーに就任させていただくことになりました。
祖父や父の影響で農業や食への想いがDNAとして受け継がれている僕のミッションは、「テクノロジーで未来の食を創造する」ことです。気候変動や世界的な人口増加・食料危機が叫ばれる中、いま食農分野のディープテックが注目を集めています。僕は入社以来一貫してこの分野への投資に情熱を燃やしてきました!
今回は、これからご一緒するかもしれない研究者や起業家の皆様に向けて、僕の自己紹介と、ディープテック(特にアグリフード分野)で起業する魅力をお伝えしたいと思います!
プロフィール
有馬 暁澄|パートナー
丸紅の穀物本部にて、トレーディング事業を通じて生産から販売までのアグリ全般に携わる。2019年8月、当社に参画。アグリテック・フードテックなどライフテック全般を中心に投資担当として従事。産学官民のアグリ・フードのエコシステム構築にも邁進。慶應義塾大学理工学部生命情報学科卒業
【主な担当先スタートアップ】
日本:インテグリカルチャー、リージョナルフィッシュ、EFポリマー、グランドグリーン、SECAI MARCHE、TOWINGなど/インド:Bighaat、Faunatech、Gourmet Gardenなど
【出資先企業との関わり方】
シード・アーリーからリード出資かつフォローオン出資を基本のスタイルとしております。出資額としては数千万円〜数億円規模です。ボクシングのセコンドのような存在として、事業に関して最も情熱がある起業家と共に歩むスタイルで、伴走させていただいております。他社事例からの分析や資本市場からの見られ方などベンチャーキャピタリストならではの知見を共有し、また、自分の得意とする産官学連携(事業会社や政府機関等を巻き込んだ協業)も推進します。
研究とビジネスをつなぎたい
僕がアグリフード領域に興味を持った最初のきっかけは父です。農学研究者で大学教授の父を幼少期から見ている中で、ふと「父の研究はどう社会の役に立っているのだろうか」と疑問を感じはじめ、次第に父のような研究者の研究をより身近に、事業化して社会に還元したいと思ったのです。
そこで僕は、事業サイドの知識を身に着けようと、リアルな商売と投資の両方を学べる総合商社の丸紅に就職し、副原料をメインに穀物関連のトレードに携わりました。
ベンチャーキャピタリストへの道
丸紅の部内有志で行ったスタートアップ投資が、僕の人生を大きく変えます。貿易という「より身近なビジネス」だけではなく、未来のテクノロジーがこれからの新しい世界を作る。そう気づかせてくれた瞬間でした。
その後、様々なスタートアップイベントや研究者の方々と話す中で、「もっと研究者に寄り添った投資がしたい」と強く思うようになり、知人経由でBeyond Next Venturesの存在を知りました。
Beyond Next Venturesでは、まさに自分がやりたかった「研究(テクノロジー)を社会に還元する投資」と「最先端のテクノロジーに対する伴走型の事業化支援」ができる。すぐに事業内容に共感し入社しました。
ベンチャーキャピタリストとして意識していること
一つは、スタートアップに足りないリソースを提供することです。僕たちは1年間だけで何百社という数の企業と話しをしますし、様々なビジネスモデルの成功・失敗事例を見ています。また、多くの外部の専門家とも繋がりがあります。僕自身、スタートアップの成長に寄与できることは基本なんでもやるスタンスで向き合っています。
二つ目は、テクノロジーとビジネスをつなぐエコシステムづくりに貢献すること。アグリ・フードテックの成功には技術の優位性だけでは難しく、いろんなプレーヤーを集めてエコシステムを築くことがポイントです。なぜなら、生産者のほかに、原料を調達する人、流通させる人、消費者に売る人など多様なプレーヤーが必要だからです。
僕たちなら、プレーヤー同士をつなぎ化学反応を起こす「触媒」としての役割を発揮できます。実際に、魚のゲノム編集技術を開発するリージョナルフィッシュでは、今年9月に実施した20億円の資金調達先のほとんどが建設や電機、商社などの事業会社です。これらの企業とゲノム編集した魚の量産体制を整えるため、一致団結して養殖プラントやシステムを新設する予定です。
15社への投資・伴走を通じて気づいた最大の課題
「どんなに優れた技術シーズがあっても、ビジネスとして社会実装できる人がいなければ、世の中にインパクトを与えることはできない。」
これは、父を見てきた経験からも実感していましたが、実際に中に入ってみると、研究開発系スタートアップには圧倒的にビジネス人材が足りていませんでした。
最近では政府も支援策を打ち出すなど機運は盛り上がっているものの、なかなか研究者とビジネスパーソンのマッチングは進んでいません。現状ではお互いが出会う機会が少なすぎるからです。
そこで、大学や研究機関との長い付き合いがあるBeyond Next Venturesでは、「有望なディープテックと出会いたい」「大きな事業を興したい」と考えているビジネスパーソンに対して、研究者と共にビジネスを創る機会を提供しています。
実際に僕はいま「APOLLO」というスタートアップ共創プログラムで、素晴らしい起業家のお二人と事業を立ち上げ中なので、興味のある方はぜひ応募してほしいですね。
社会的インパクトの大きいアグリ・フードテックの魅力
アグリテックで特に代表的なのは植物工場や生産者を支援するIoTやロボティクス、フードテックでは代替タンパクの植物肉、培養肉や昆虫食があります。
食は世界中の誰にとっても当たり前で、絶対に必要なものです。ですが、牛からでるメタンは温室効果ガスの主な原因の一つですし、家畜を放牧するために森林破壊も進んでいます。世界人口が2050年までに100億人に増えると言われる中、食料の供給量を増やすことも大きな課題です。
一方、これまで畜産農の世界は職人気質で属人的な側面があり、イノベーションが起きづらい環境にありました。今までのやり方では、これからの気候変動や人口増加の問題にとても追いつかないのです。そんな地球規模の課題を変えようとするのが、アグリ・フードテックです。
世界を変える可能性を秘めたアグリ・フードテック
僕たちの出資先の一つに、「培養肉」を生み出すインテグリカルチャーというスタートアップがあります。彼らの最大の強みは低コストで魚や肉などを生産できる培養プラットフォーム技術で、GAFAのように培養肉メーカーの世界基盤になる可能性があるのです。
米国にはインディゴ・アグという面白いスタートアップもあります。この企業は種苗会社ですが、ただの種苗ではありません。育成を促進させる微生物を予め種にコーティングすることで、通常より何倍もの収穫量を可能にしました。気候変動によって通常の栽培方法では作物が育ちにくくなっているため、将来的には「インディゴ・アグの技術なしでは収穫できない」なんてことも起こるかもしれません。
今が新規参入のチャンス
アグリ・フードテックの歴史は、本格的に動き出してからまだ5〜10年ととても短い。だから今は「まだ」参入できる余地があるし、勝つポテンシャルも高い領域だと思います。
しかも、畜産農の世界はIoTやロボット技術、エネルギー、バイオテックにいたるまで様々なジャンルの技術が求められます。テクノロジー好きな人にとって、とてもエキサイティングで面白いテーマだと思います。
起業家と世界トップを狙いに行く
僕の目標は、人間にとって生きる上で欠かせない「食」の未来をよりよく変えること、創造することです。そして、みんなの健康を支えたいという情熱が根本にあります。
そのためには、革新的なテクノロジーや優秀なビジネスパーソンを巻き込んで一大産業にしたい。ですから、テクノロジーに興味があって、世界も視野に入れてビジネスを大きくすることにパッションのある人と、もっともっと出会いたいです。
よく、研究がベースの事業だと、「専門知識が必要なのでは?」と質問をいただきます。もちろん、研究を推進する研究者を目指すのであれば必要ですが、ビジネスを推進するリーダーとして関わりたい場合、あまり関係ないと思っています。それより大事なのは、パッションです。パッションがあれば、後からいくらでもカバーできますし、現に僕の周りで成果を出されている起業家・経営者の方を見て、本当にそう思います。
この世界にはチャンスがたくさん眠っているので、やる気のある人にどんどん入ってきてもらって、ぜひ「いま」挑戦してもらいたいです。
ちなみに、僕は「食べること」が大好きです。コストパフォーマンスの良いお店を日々発掘して、仲良くなった人とよくお薦めのお店に行き、美味しいものを食べたりします。お店選びのセンスには自信があるので、アグリフード領域で変革を起こしたいと考えている皆さん、仕事も遊びも「つねに全力投球!」がモットーの僕と、ぜひ一度ご飯に行きましょう!!