【女性会計士オンライン座談会】もっと自由に!私らしいキャリアの見つけ方

鷺山:ここ1~2年で大きく変化している「女性会計士の働き方」。スタートアップでも監査役や社外取締役として女性会計士の方を求めるケースがぐっと増えました。この会を通して、女性会計士の方々が自分らしいキャリアの選択をするきっかけになれば幸いです。

それでは、進行役を務めていただく道古さんにバトンタッチします!

道古:こんにちは、道古です。私は、EY監査法人、100人規模ベンチャー「C Channel」で経理や上場準備経験を経て、現在は子ども向けテーマパーク事業を展開するスタートアップ「リトプラ」で経営企画に携わっています。私自身、本日のゲストである服部さんや林田さんの話を以前聞く機会があり、自分のキャリアにもすごい影響しています。もっと面白いキャリアを歩む女性会計士さんが増えればいいなと思い、ファシリテーターとして参加することにしました。

それでは、本日のゲストである服部さんと林田さんに自己紹介をお願いしたいと思います!

登壇者

株式会社ツクルバ 常勤監査役 株式会社サンワカンパニー社外監査役 服部景子公認会計士事務所代表

服部 景子

公認会計士、米国公認会計士(デラウェア州)宅地建物取引士。 国内外の金融機関を経て、公認会計士試験合格。新日本有限責任監査法人に入所。上場企業や外資系企業の会計監査に従事した後、配偶者の海外赴任を機に退職し、服部景子公認会計士事務所を独立開業。2016年株式会社ツクルバの常勤監査役、2020年12月に株式会社サンワカンパニーの社外監査役に就任。 二児の母、筋トレ女子(Instagram:#筋トレ会計士女子 keiko

株式会社キズキ 取締役

林田 絵美

「何度でもやり直せる社会を作る」をビジョンとする株式会社キズキの取締役。うつや発達障害の方が会計・英語・マーケティング等を学び、キャリアを築くための「キズキビジネスカレッジ」、キャリアに悩む方へ自己理解やスキルアップのコンテンツを提供するデジタルサービス「キズキクラウド」、障害者のマネジメントや戦力化を支援する企業様向けサービス「キズキHRサポート」を新規事業として立上げ。PwCあらた有限責任監査法人金融部門出身。公認会計士。発達障害当事者。

企画・質問役

株式会社リトプラ

道古 麻由

デジタルテーマパークを運営する株式会社プレースホルダ(現 リトプラ) に所属。コーポレートチームにて、事業計画の策定や予実管理を担当

Beyond Next Ventures株式会社 執行役員

鷺山 昌多

Beyond Next Venturesにて、HR・キャリア支援領域を統括。起業家育成およびスタートアップ領域における、新しいキャリアおよびロールモデルの創出を目指して活動。起業家育成プログラム「INNOVATION LEADERS PROGRAM」は、第3回 日本オープンイノベーション大賞 文部科学大臣賞を受賞。

子育て、独立、そして筋トレ。自分の好きを追求した人生

服部:今日は、私自身がすごいキャリアに悩んだ経験があり、いろいろ試行錯誤しながら今に至っていますので、私の経験談を共有することでどなたかのキャリアのお役に立てればいいなと思い、腹を割ってお話しさせていただきます。

私は2児の母で、ずっとPTAをしておりPTAでも監査担当です(笑)。主人の海外転勤で2年間アメリカにもいた時期もあります。趣味はウォーキング、筋トレ、料理、あとは素敵なホテルに泊まることですね。沖縄に行くことも大好きです。

職歴としては、大学を出てから金融機関に入りましたが、組織が合わなくて外資系に転職。その後複数の会社に転職をしていますが、順風満帆ではなくリストラも経験しています。

そこで、公認会計士の資格を取る決断をし、会社を退職して勉強に専念し、合格後に監査法人に入りました。

私の転機は2012年。主人の海外駐在が決まり、自分は日本で今のキャリアを続けるか、それとも一緒にアメリカに行くか、などいくつか選択肢がありました。その中で、せっかくの機会だしニューヨークの生活を楽しみたい、ということで渡米を決めました。

帰国後は、筋トレにはまってビキニ大会に出たり、2016年の独立後はいくつかの企業の監査役に就任したりと、仕事もプライベートも楽しんでいます。

振り返ると、20代はインプットの時期で、とにかくすごく勉強をしました。30代はそのインプットのアウトプットに注力した時期。40代は子育ても少し楽になってきたので、自分の理想とする人生を実現することに注力しています。

友人の誘いでベンチャー企業の監査役へ

服部:今常勤監査役をやってるツクルバという会社へ入ったきっかけは、会計士時代の友達からのお誘いです。ベンチャー企業はVCから資金調達をすると取締役会を作らなくてはならず、それを監督する機関として会社法で監査役が必要なので、必ず監査役が求められます。

ただ、ベンチャー企業の監査役で週5のフル出勤というのは珍しく、多くても週3~4日、しかも役員は雇用契約ではないので、法定勤務時間といった概念もなく、(もちろんその企業との交渉次第ですが)割と臨機応変に稼働できるんです。なので、子育てママにちょうどいい業務量だったりしますし、こういった需要がほかのママ会計士さんのいろんな働き方に繋がっています

そして、このツクルバでの経験を知った大阪の建材メーカーのサンワカンパニーからお声がかかり、2020年に同社の社外監査役にも就任しました。ここでは会計の専門家として、月1回の監査役会と取締役会に参加しています。

独立を選んだ理由

服部:まず今の仕事をしている理由は、会計士という専門家になりたかったことが大きいですね。あと、内部統制もすごく好きで、自分の天職だと思っています。会計の月次決算を締めるのも、見るのも楽しみながらやっています。

次に今の働き方を選んだのは、結婚や出産もしたかったし、その中で仕事もしていきたいけどフルタイムで働き続けることに違和感があったからです。

監査法人でフルタイムで働いているときに1人目の子供が生まれたのですが、昇格したいという思いもあり、9時から17時まで働いて、子供を迎えに行って、また夜の9時から深夜2時まで働く…というような生活をしていました。

次第に、この生活をいつまで続けるのか?という自分への問いが生まれ、本当に昇格したいのか?とも考えるようになりました。そして、自分と向き合った結果、この生活を続けるのは難しいという決断に至りました。

また、夫の海外駐在でニューヨークで生活しているとき、子供のお迎えで会うパパママたちの自営業の割合が高くて、生活レベルも豊かだったんです。

この経験で価値観が180度変わり、「今まで何に囚われていたのか」と思いましたね。上場している大手企業に勤めていないと心配だったけど、実は違うのかも、と。

そこから大々的に独立を皆にアピールして、「どんな仕事でもやります!」という感じで請け負っていったら、いろんなチャンスが舞い込んできて、いまは基本リファラルでお声掛けいただけるようになりました。

なぜ筋トレをしているのか

服部:39歳の時にふと、人生に物足りなくなって自分をもっと追い込みたくなったんですよね。それで思いついたのが筋トレでした。今では毎朝1時間の筋トレが自分と向き合える唯一の時間で、どんな仕事をしていようが関係なく重さを挙げなきゃいけないので(笑)、いろんなこだわりがなくなります。また、ポジティブマインドの醸成だったり、肩こりや不眠などあらゆる身体の不調の改善にもすごく貢献しています。

私の中ではボディメイクも、仕事も、子育ても、全てが繋がっていて、豊かな人生を送るためにどれも必要なものだし、努力し続けなければ得られないものがあると思っています。

監査法人勤務からNPO法人の経営者に

林田:株式会社キズキの林田です。趣味は、旅行とハイキングとボクササイズ。得意なことは一点突破で、苦手なことはマルチタスクです。特徴としては、会計士 兼 ベンチャー経営に携わっていること、発達障害の当事者であることです。

キズキという会社は「何度でもやり直せる社会を作る」ために、様々な困難に直面した方たちに向けた4つの事業を展開しています。

一つ目が不登校、中退、ひきこもりなどの方向けの学習支援事業。二つ目にうつや発達障害の方のためのビジネススクール。三つ目は全国30ヶ所の国や自治体から事業を受託している公民連携事業。最後が精神発達障害の方を雇用している企業へのコンサルティングや研修などをおこなう法人連携事業です。

生きづらさを抱える人をサポートすべく会計士の道へ

林田:私は高校3年生のころ、震災で家が停電したとき、いろいろ考える時間ができて、ふと公認会計士になろうと決めました。

その背景としては、自分が高校生のときにこれからどうやって生きていこうか悩んでいたんですね。そんな中で、自分と同じように生きることへの苦しさを抱えている人のための事業をやりたいと漠然と思っていました。

そのためにどんなアプローチをすべきか考えても分からず、まずはビジネスを勉強しようと思い、高校3年生の春休みから会計士の勉強を始めました。

大学在学中は当初からソーシャルビジネスが進んでいたロンドンに勉強に行きました。また、大学生の頃からプロボノの活動もやっていました。具体的に何から始めればいいのか分からなかったので、そこに近い領域で経験や人脈を広げればチャンスに巡りあえるかも、と思い、プロボノなど小さなステップを踏むようにしていました。

監査法人からベンチャー企業へ

林田:新卒でPwCあらた有限責任監査法人に入社し、仕事の範囲が限られてるときは結果も出ていました。ただマルチタスクが苦手な私は、段々仕事が増えてくるとミスが増え、クオリティにも偏りが生じ、自分の脳もかなりストレスを感じるようになり、社会人1年目の終わり頃の繁忙期に過呼吸で倒れてしまったんです。

その時に発達障害という診断を初めて受けました。それがきっかけで元々生きづらさに関わる仕事がしたいと思っていたのが、うつや発達障害に関わる仕事をしたい、という気持ちに変わっていきました。

ただやりたい事業にはなかなか巡り合えませんでした。だからといって自分が事業を立ち上げても誰かがついてきてくれるイメージも持てず、再び迷い始めました。

そんな中、たまたま弊社の代表の安田が登壇したイベントに参加したことがきっかけで、キズキに出会いました。監査法人に入社して3年目のことです。

このとき自分の中で苦しかったのが、会計士の世界に染まってきた一方で、自分は会計士と言えるほどの会計士でもないのに新しい挑戦をしていいんだろうか、とすごく悩みました。

そんなとき、高校の同級生が自分がやりたいことを選んでる姿を見て、「これでいいんだよな」という納得感が生まれ、キズキに転職を決めることができました。

キャリアに悩む女性会計士の方へのメッセージ

自分の人生を生きる

服部:まずは「自分の人生を歩んでいますか?」と自分に問いかけてみてほしいです。優秀な方ほど、誰かの要望に応えようと気づいたら他人の人生を歩んでいた…なんてこともあると思います。

あとは、会計士だから、お母さんだから、女だから、と誰かから求められる像を演じていないですか?そして、本当にいま好きなことをやってますか?本当に自分の好きなことは、何かわかりますか?その辺も立ち止まって考えていただきたいなと思います。

人生何選ぶのか自由で、犯罪でなければ誰からも咎められないので、絶対自分の好きなことをやった方がいいと思います。

判断に迷ったときは、これは私が大事にしている軸ですが、「一緒に過ごす人や一緒に仕事をする人が信頼できるかどうか?」を見てほしいです。この人は信頼できるかなということを繰り返し自分に聞いて、自分の直感を信じて進んでいってほしいです。

やりたいことは無理に見つけるものではない

林田:自分らしいキャリアを築く上で大切だと思うことは、「やりたいことは無理に見つけるものではない」ということです。私はいまはやりたい仕事ができていてすごく幸せですが、やりたいことがないからといって自分を責めたり、焦る必要はないと思っています。

ではやりたいことが見つからないときにどう過ごすかですが、経験上「ウォーミングアップ」の期間にすることをおすすめしています。私も監査法人で培った業務改善の経験は今でも役立っていますし、いざ自分が掴みたいチャンスに巡り合ったときにすぐ飛びつけるようにしておくといいのかなと。

あとは、やりたいことを自分の仕事にする過程において、「人のアドバイスは大切にする、だけど囚われない」ということ。人によって歩むキャリアや環境は異なるので、もらったアドバイスに合致しない考えを持っている自分を否定せず、最終的には自分の判断軸で、結論を出すといいのかなと思います。

道古:服部さん、林田さん、ありがとうございました!お二人のお話を聞いて、会計士という狭い枠の中でも、多様な働き方や役割が広がっていることを知りました。自分の望む働き方を探すために、まずは小さな一歩でも行動してみることが大切なんだなと思います。女性会計士の皆さん、共にがんばっていきましょう!

Shota Sagiyama

Shota Sagiyama

Executive Officer / Talent Partner