2025年3月に米国で開催された「The World Agri-Tech Innovation Summit」と「Future Food Tech」へ当社パートナーの有馬が参加してまいりました。本記事では、現地のグローバル投資家との対話を通じて見えてきた資金調達の最新動向などについてお届けします。
The World Agri-Tech Innovation Summit
- 開催時期:2025年3月11日~3月12日
- 開催地:カリフォルニア / 米国
- 会場:San Francisco Marriott Marquis
- 出展対象品目:
– 農業技術(AgriTech)関連のスタートアップ、投資家、農業関連企業、食品ブランド、政策立案者など
– 持続可能な農業、気候変動対策、AI・ロボティクス、バイオ農業、再生型農業、炭素市場、サプライチェーンの透明性など - 参加者数:2,000名以上(公式Webサイトより)
- 公式ウェブサイト:https://worldagritechusa.com/?utm_source=chatgpt.com
Future Food-Tech
- 開催時期:2025年3月13日~3月14日
- 開催地:サンフランシスコ / 米国
- 会場:San Francisco Marriott Marquis
- 出展対象品目・参加者:
– 食品業界のリーダー、技術提供者、投資家、スタートアップなど
– AIを活用した食品開発、バイオテクノロジー、持続可能なサプライチェーン、代替タンパク質、健康志向の食品など - 参加者数:1,700名以上(公式Webサイトより)
- 公式ウェブサイト:https://futurefoodtechsf.com/
世界で変わる投資の視点:トラクション重視の時代へ
まずワールドアグリテックサミットについて、昨年との違いはありましたか。
有馬:世界中からアグリ・フードテックの投資家が集まるワールドアグリテックサミットですが、昨年と比較して投資家の数はやや減った印象でした。
恐らく背景には、ファンドレイズを含めて投資環境があまり良くないことが影響していると想像しています。米国のVCやグロース領域のVCは減っていた印象で、一方でシード・アーリーに投資する比較的小規模なヨーロッパやシンガポール、イスラエルからのVCは相対的に多かったですね。
さまざまな国の投資家と話す中で強く感じたことは、投資基準が明確にシフトし、売上や商業化の実績(トラクション)をより重視する流れが強まっていることです。
これまで、植物工場やEコマース系などの先行投資型スタートアップが大規模な資金調達を行い、ハイバーンで突っ走る時代がありました。しかし今は投資環境が冷え込み、キャピタリスト側も収益をより意識するようになっています。その結果、ファンドレイズがしにくい環境となり、最終的には資金繰りが立たずスタートアップが倒産してしまうケースも出てきています。
これらの流れを踏まえると、アグリ・フードテックにおけるスタートアップは潮目が変わったと言えるでしょう。これからは創業初期から、利益を確保できるコストと価格設定を考えた上でプロダクトを開発すること、そしてマーケットフィットするまでは最小限の金額設定でPDCAを回し続けることが重要であると考えています。
また海外VCとの対話を通じて、シリーズAの段階から「トラクションや利益がある程度見えないと投資検討が難しい」と明確に言う投資家もいました。
ただし、もちろんシード投資においては同様ではないと思います。シードでトラクションを重視して意思決定をするのは現実的ではないため、スタートアップの複数の指標を見ながら、プロダクトやサービスの実現性をどこまで確信を持ったうえで投資できるか、ベンチャーキャピタリストの手腕が試される領域だと思います。

M&Aが主流の米国に対し、日本はどんなExit戦略を描くべきか
海外と比較した際に、Exitの戦略について日本との違いはあるのでしょうか。
有馬:そもそもの前提が日本と大きく異なります。特に米国では多くがIPOではなく、M&Aのシナリオを描くのが主流になっています。M&Aに向けたエコシステム作りに力を入れており、事業会社との連携などはVC側も一緒に初期段階からやっていく動きがあるようです。
実際、複数のスタートアップ経営者の方々にExitに関する質問をしたところ、創業の初期段階からExit戦略について考えており、さらにM&AでのExit戦略がベースになっているため、一回目のコンタクトで資本業務提携やトラクションについて話しをすることも多いようです。
ただこれは、あくまで海外の話であり、Exitの方法についてM&Aをお勧めしているわけではないということはお伝えしたいです。
M&AでのExitを考える場合、事業会社に売却するケースが多いので、プロダクト開発において売却先のプロダクトやサービスにフィットするような製品を開発するケースがあります。初めからそのシナリオに納得していれば問題ないですが、当然M&Aにも良い面・悪い面があるので、各社の状況に応じてIPOも含めた複数の選択肢を持ちながら戦略を描くべきだと思っています。

では日本のスタートアップのExit戦略にはどのような方法があるのでしょうか。
一つの考え方として、アーリーの段階で資金調達を重ねることで自社を成長させ、その過程で事業会社との連携を増やしていき、結果としてM&Aも含めたExitの具体像が見えてくる、といった段階を踏むほうが、日本のスタートアップにはフィットする場面が多い気がしています。
加えて個人的には、ユニコーンやギガコーンを目指す、もしくは、社会的に大きな意義をもたらすようなビジョンを持っているスタートアップが好きなので、そういった挑戦はこれからも応援しつづけたいですね。
海外調達は、米国VC一辺倒ではなくグローバルファンドも視野に
直近、米国での政権交代など様々な影響から、クロスボーダーでの投資が難しくなっているという話もあるようですが、いかがでしょうか。
有馬:難しくなっている、という実感はあります。ただこれは政権交代に限らず、以前からの構造的な傾向でもあります。アグリフードに限らず、同じようなテクノロジー・事業フェーズの企業が「米国」と「米国以外」それぞれ存在する場合、米国VCは基本的に米国企業を優先します。これは彼らの立場からすると自然な判断ですが、最近はその傾向が一段と強まっていると感じます。
背景にあるのは、トラクションの見え方です。日本発のプロダクトや技術が米国市場でどこまで伸びるかは、実際に米国で展開してみないと判断しづらいですよね。だから米国VCの投資判断では、
- まず日本で十分なトラクションを積んでいること
- さらに米国でも一定のトラクションが見えていること
が求められやすくなります。
その意味で、米国からの資金調達を狙う場合は「米国での勝ち筋をどう早期に示すか」が重要ですし、同時に、最初からグローバルに投資するファンド、つまり米国以外のVCの比重を上げるという戦略も現実的だと思います。
イスラエルや欧州、シンガポールのVCは、自国・自地域を軸にしつつも、世界各国の優れたスタートアップに投資をする考えがベースにあるので、日本のスタートアップは相対的に出資を受けやすいと考えています。
ただし資金調達を相談するときに重要なのは、資金以外のシナジーをしっかり見据えることです。たとえば米国VCであれば、米国市場へのアクセスや顧客・採用・次ラウンドのネットワークなどがシナジーとして期待できますよね。一方でグローバルファンドも含め、どの投資家に何を期待するのか、資金だけなのか、事業面のレバレッジまで求めるのか、を事前に言語化しておかないと、資本政策も海外展開の進め方もブレやすくなります。
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