ディープテックといわれる高度な科学技術シーズの事業化を支援するアクセラレーションプログラム「BRAVE」。今回は、2021年度のプログラムにご参加いただいた株式会社エキュメノポリス(以下、エキュメノポリス)の代表取締役である松山洋一氏にインタビューを実施しました。
2022年5月に早稲田大学の会話AIメディア研究グループからスピンアウトして設立されたエキュメノポリス。松山氏は、起業前にはアメリカのカーネギーメロン大学で会話AIの研究をしており、ダボス会議の公式バーチャルアシスタントの開発リーダーも務めていた経験を持ちます。
今回は、起業準備中の段階で参加したBRAVEで得られたメリットや、どのように事業がブラッシュアップされたのかを伺いました。
人のようにコミュニケーションできる英語学習AI
―まずはエキュメノポリスの事業概要を聞かせてください。
松山:私たちが開発しているのは会話AIエージェントプラットフォーム。様々なシーンでの、AIエージェントによる会話体験サービスを提供しています。
その第一弾として開発したのが英会話学習プラットフォーム「LANGX」。英会話を学習する人の習熟度や理解に合わせて会話を調整し、相手の能力を最大限に引き出すことで会話する力を効果的に向上するサービスです。単に会話の応酬をするだけでなく、まるで人間同士のコミュニケーションのように、発話するタイミングの制御や非言語的なやり取りができます。
早稲田大学内での実証実験を経て、来年以降大学における英会話授業での導入を予定しています。また、英会話学習塾などからもお問い合わせを頂いております。
一番の参加メリットは優秀なILPメンバーたち
―BRAVEに参加したきっかけを聞かせてください。
Beyond Next Venturesさんに誘われたからです。実はこのようなアクセラレータープログラムには懐疑的で、最初はあまり乗り気ではありませんでした。プレゼンの仕方一つだけで事業が成長するわけではないのだから、プログラムに参加する暇があったら事業の開発や研究に時間を割きたいと思っていたのです。
そのように思って参加の返事を先延ばしにしていたら、応募の締切リマインドがあり「まあいいか」くらいの気持ちで参加を決めました。ただし、どうせ参加するなら本気で取り組もうと思いました。
―実際に参加した印象はいかがでしたか?
いい意味で期待を裏切られ、得られるものがたくさんありました。特によかったのがILPのメンバー。私たちのチームには3名の方が手伝いに来てくれたのですが、彼らがとても優秀で。みんな大企業で活躍している方ばかりで、私たちの事業にも的確なアドバイスをくれましたし、何よりも人がいい。
私と近い年代の方たちだったので、彼らと議論する時間がとても楽しかったです。私たちの会社は研究者しかおらず、事業開発が弱いのは自覚していたので、彼らの意見を聞くことで、自分たちも事業の状況を客観的に見れるようになりました。
何より彼ら自身が積極的に動いてくれてたのは嬉しかったですね。彼ら自身のネットワークでターゲットを探して、顧客インタビューまでしてくれて。お陰様でプログラム期間中に初めての顧客も見つかりました。
語弊がある言い方かもしれませんが、無償で彼らのような優秀な人材と出会えて、共に事業づくりを行えることは、とても有益だと思いました。
―具体的にどのようなアドバイスがあったのか教えてください。
特に印象に残っているのが「作る前に売れ」というアドバイス。それまで「作ってから売る」ものだと思っていた私にとっては衝撃的な言葉でした。たしかに先に売ってしまえば「本当に売れるのか」と悩む必要もありませんし、最初から顧客のニーズに即したサービスを作れます。
加えて、先に売ってしまえば、お客さんもサービスができるまで待ってくれるので、私たちも開発を焦らなくてすみます。研究ばかりしてきた私にとっては目からウロコの金言でしたね。
―ILPのメンバーの方たちとはとても深く繋がれたんですね。
BRAVE参加チームの中で私たちが一番関係を深められたと勝手に自負しています(笑)。最後のピッチの際も、早稲田にあるエキュメノポリスのオフィスに皆が集まって応援してくれました。
ぜひ、そのうちの何人かにはいつか正式にジョインしてもらって、また一緒に働きたいなと思っています。
メンターのサポートもあり、ビジネスモデルを大きくアップデート
―メンターの方の印象はいかがでしたか。
メンターの方にもとても感謝しています。私たちのメンターをしてくれた方は、私と同じ早稲田のOBであり、バイアウト経験のある起業家でした。
目の前の売上を上げることも確かに大事ですが、そのメンターはより高い視線からアドバイスをくれました。例えば私たちの技術は汎用性が高く、様々な市場にアクセスできるものの、選択肢が多い分絞り込むのが難しくて。
その時に教わったのが「ファウンダーマーケットフィット」という言葉。最後は起業家自身がワクワクする方を選ぶことが大事だと言われて。「利益が出るか」という軸で判断することもできますが、本当に気持ちが乗るかは話は別です。
今でも、ビジネスで迷った時はその言葉を思い出して判断の基準としています。
―プログラムに参加したことで、ビジネスモデルの変化などがあれば教えてください。
プログラムに参加する前は、ユーザー向けにビジネスを展開しようと思っていました。しかし、プログラムを通して法人向けのビジネスモデルにも大きな可能性を感じて。ILPのメンバーたちが初めての顧客を見つけてくれたこともあり、法人向けにビジネスに大きく舵を切り、事業を大きく推進させることができました。
―最後にBRAVEに興味のある方にメッセージをお願いします。
BRAVEは「研究者」に特化してその事業化を後押しする数少ないアクセラレーターです。私は最初は参加することに懐疑的でしたが、正式ジョインしてほしいと思うほどの優秀なビジネスパーソンにも出会えました。ビジネス側との接点がほしい、創業メンバーを探している、資金調達に向けた準備がしたい、などと考えている研究者にとってはいい機会になると思います。
エキュメノポリスでは積極採用中!
エキュメノポリスは、国プロ採択・VCからのエクイティ調達含め約10億円の資金調達を実施しています。その資金をもとに、同社では現在、デジタル社会のアップデートに向けて会話AIエージェント技術の開発を加速するメンバーを募集しています。ご興味がある方は以下の採用ページをご確認ください!
https://www.equ.ai/ja/careers/