Beyond Next Venturesが挑む、ディープテック領域の起業家を輩出する取り組み

鷺山:こんにちは、ディープテック領域のベンチャーキャピタルでタレントパートナーを務める鷺山です。

いまの日本において、ディープテック領域における経営人材の市場はまだ途上であり、特に医療・バイオ・食農等の特定領域における知見の深い「起業家」や「シリアルアントレプレナー」の絶対数は、米国などの海外と比較すると少ない状況です。

ただ、見方を変えると、いま手を挙げれば経営参画の機会を手に入れることができる「絶好のチャンス」でもあるのです。

しかし、多くのビジネスパーソンにとっては、決して身近な選択肢ではなく、研究成果を活用したディープテックスタートアップの魅力や、事業化を志すトップクラスの研究者と出会う方法について、分からない方が多いのも実情です。

そこで私たちは、この現状を変えるために、起業マインドや経営志向を持つビジネスパーソンを発掘し、ディープテック領域での挑戦を後押しする活動を開始しました。

社会課題を起点に、起業家とVCが技術シーズを活用する「APOLLO」

2021年12月、医療データのイノベーションに挑むディープテック・スタートアップ「株式会社ALY」が客員起業家(EIR)とVCによる共同創業プログラム「APOLLO」発の第1号として産声を上げました。(※現在APOLLOでは第3期の客員起業家を募集しています!)

この創業ストーリーが始まったのは、2021年6月のこと。AIスタートアップ出身の中澤氏がAPOLLOに採択され、医療領域に精通する当社パートナーの橋爪との事業構想のディスカッションが始まりました。その後、医療における解決したい社会課題を特定し、当社のネットワークを通じた研究機関における研究シーズとの連携、医療機関における技術(PoC)実証などを経て、約半年後に当社からの資金提供と「株式会社ALY」の創業が実現しました。

このAPOLLOの取り組み内容については、日本経済新聞やNewsPicksなどのメディアでも取り上げていただいています。

これまでは、ディープテック領域でスタートアップを創業する際には、まず有望な研究成果(技術シーズ)を特定し、その技術に基づいた事業モデルを組み上げていくプロセスが一般的です。

今回当社で新たに発足したプログラム「APOLLO」は全く逆の発想で、【市場課題とペイン】という市場側にあるニーズに対して、それを解決しうる有望なディープテックにスポットライトを当て、スタートアップ創業を目指す取り組みです。

この主役となるのは、特定の産業領域に情熱を持つ“ビジネス経験豊富な起業家候補のビジネスパーソン”です。医療・食・農業・環境などの領域におけるグローバルな社会課題を元に、解決策としての事業プランをキャピタリストと共に練り上げ、必要に応じて後から必要な技術を巻き込んでいきます。

リスクなしで研究者と創業体験「INNOVATION LEADERS PROGRAM」

私たちは、APOLLOを開始する前から、別のプログラムも運営しています。「ディープテック領域での起業や経営に興味はあるが技術を探しているビジネスパーソン」を対象にした、短期の有望シーズをもつ研究者との創業実践プログラム「INNOVATION LEADERS PROGRAM (ILP)」です。累計500名以上が参加し、毎年数名の経営人材候補の方が創業社長・経営メンバーとして正式ジョインしています。

INNOVATION LEADERS PROGRAM(ILP)とは:ビジネスパーソンが事業化予定の先端研究を有する研究者とスタートアップ創業に挑む2か月間。卒業後には創業参画機会を手にできる、超実践的創業プログラム。https://beyondnextventures.com/jp/startupcareers/ilp/

私は、出資先企業の経営者を探すヘッドハンター業務も担当しており、年間500名を超えるビジネスパーソンの方々と直接お話をしてきました。大手企業に存在しないような先進的な科学技術やディープテックは人の心を動かすもので、お会いした方の半数以上が、「面白い、何か関わってみたい」と感想を口にされます。

しかし、当然ですが、「すぐ会社を辞めて創業や経営に参画します」とはなりません。起業意欲がある方でも、「未知の研究者と人生をかけて事業を始める」または「創業間もないディープテックスタートアップに参画する」という決断は簡単ではありません。

それであれば、いきなり本格的にジョインするのではなく、「仕事後の時間を使ってディープテックの魅力を存分に感じていただき、自らが事業のプランを書いてみる」という短期的に創業を実践してみる場を提供しようと考え始めました。現職を辞める必要もなく、自分が一番心惹かれる、最も事業化に近いトップクラスの研究者の技術シーズをもとに、実際にディープテックスタートアップの創業に挑む体験ができます。「創業をリアルに実践できるのにノーリスク」というのが、(2017年当時)数年後に訪れる副業・兼業ブームを先取りした新しい取り組みとして、複数のメディアにも取り上げていただきました。

50名以上のCXOが誕生。ディープテックをもっと身近に


ILPは2017年に始動し、500名以上の卒業生を抱えるディープテック領域では国内最大の経営人材育成プログラムへと成長しました。そして、50名以上が、このILPをきっかけにディープテック・スタートアップの経営者になりました。その多くは、ディープテック領域に足を踏み入れたことのない人たちです。

また、近年では、ディープテック・スタートアップの創業者・経営者への登竜門として、2021年に「第三回日本オープンイノベーション大賞 文部科学大臣賞」を受賞するとともに、2022年に経団連が取りまとめた「スタートアップ躍進ビジョン」でも本活動を取り上げて頂きました。

研究成果発か、ビジネスモデル発か

鷺山:優れた研究成果を起点としたスタートアップを創る活動においては、ILPを通じて一定の成果を残すことができました。同時に、そこに手が届いた今だからこそもう1つの、逆のアプローチである新たな挑戦「APOLLO」を始めています。

繰り返しになりますが、APOLLOは、「社会の中長期的なテーマや解決すべき課題のために研究を活用」します。それを成し遂げる事業プランを、客員起業家(未来のCEO)なるビジネスパーソンがキャピタリストと共に練り上げ、事業の中核となる技術シーズを組み入れて、スタートアップとして世に生み出していきます。

“研究成果の事業化”を主眼に置くと、多くの場合、その出発点は、産業や社会課題から距離のあるアカデミアからスタートします。その際に、研究者および周囲で想像しうる事業モデルで検討した結果、「これはスタートアップ化は難しいのではないか」という結論になることもあるでしょう。

もし、研究者自身が気づかない、または、気が付いても実現し難い事業を、ビジネスに精通した誰かがビジネスモデルを組み、研究成果にあたらしい活用法と価値を与えてくれるとしたら、それは研究の社会実装に対する一つの新しい道筋を切り開く可能性があります

キャピタリストと共に、10年後の社会を変えるスタートアップを創業しませんか?

研究成果を起点とした「ILP」、社会課題を起点とした「APOLLO」、手段は違えど目指すものは「ディープテックで世界をより良くする」ということ。この記事を通じて、ご自身の起業につながるディープテック・研究者との出会いや、スタートアップの経営者に就任するチャンスがあることを感じていただけたら嬉しいです。

そして、いま確固たるビジネスプランをお持ちでなくとも、「APOLLO」では、客員起業家(EIR)として、Beyond Next Venturesと共に1年後の創業を目指すことができます。私たち自身も、完成形には程遠い挑戦途上のスタートアップではありますが、この「APOLLO」という挑戦を通じて1人でも多くの起業家を生み出し、研究の社会実装と起業家輩出の新しい道筋づくりに取り組んでまいります。

社会に大きなインパクトのあるスタートアップの創業に挑みたいビジネスパーソンは、ぜひ私までDMをいただくか、こちらからお気軽にコンタクトください!

Shota Sagiyama

Shota Sagiyama

Executive Officer / Talent Partner