世界が注目する次世代Deep-Tech Hub:インド|TECHNIUM Global Conference 2025 開催レポートNo.4

Beyond Next Venturesが共催として参画した、日本初のディープテックに特化した国際カンファレンスである「TECHNIUM Global Conference」。日本のディープテックスタートアップを牽引するトッププレイヤーが集結し、多数のセッションが行われました。

その中から本レポートでは、Beyond Next Venturesでインド投資を統括するJay Krishnanと、セコイア・キャピタル・インディア(現Peak XV Partners)で長年にわたり活躍してきたShailesh Lakhani氏の対談をご紹介します。

Session Title: India: The World’s Next Deep Tech Darling Startup Destination -powered by Beyond Next Ventures

モデレーター
Jay Krishnan (Beyond Next Ventures株式会社 Partner & Head of India Investments(India)

登壇者
Shailesh Lakhani (Ex Managing Director- PeakXV / Sequoia Capital)

「India: The World’s Next Deep Tech Darling Startup Destination 世界が注目するディープテック次世代ハブ:インド」では急成長するインドのディープテック市場と日本企業との連携可能性について熱い議論が交わされました。

インド・スタートアップエコシステムの変遷

セッション冒頭、Jayはこの20年におけるインドのスタートアップエコシステムの発展について述べた。

「2010年当時、インドの資本流動性は10億ドル未満で、IPOは1〜2件、ユニコーンやスタートアップの数もごくわずかでした」と彼は振り返る。

しかし2025年には、資本流動性が200〜300億ドルに拡大し、ユニコーン企業数も110社を超えるまでに成長「今や、インドは世界で3番目に大きなスタートアップエコシステムを有する国となっている」とJayは語る。

左からJay KrishnanとShailesh Lakhani

続いて、Jayは、Shailesh氏に2010年にまだスタートアップ大国ではなかったインドへなぜ戻ったのか、その背景について質問しました。これに対してShailesh氏は「インドが将来的に巨大な消費市場となり、何億人もの人々が中間層へと加わることが予見できたため」と回答。

当時のインドではまだ4Gインターネットが普及しておらず、「4Gの普及と可処分所得の増加がエコシステム発展に期待を持っていた」とし、加えて潤沢なエンジニア人材の存在もポイントだったようだ。

また、Shailesh氏はベンチャーキャピタリストとしての初期の経験は「非常にスローだった」が、当時のインドはまだ4Gインターネットが普及しておらず、「4Gの普及と可処分所得の増加がエコシステム発展に期待を持っていた」とし、加えて潤沢なエンジニア人材の存在もポイントだったようだ。「当時のリーディングカンパニーへ初期からアクセスできた」と、Flipkartのような企業に初期段階からアクセスした事例も挙げた。

現在では業界のスピードが加速し、創業者と深く関わる機会は以前よりは減ってきているとしながらも、「人が成長し、変化し、当初思っていた以上のことができるようになるのを見るのがこの仕事の醍醐味」と、VCという仕事のやりがいについても語った。

10年前にインドでハードウェアのスタートアップを経営していたJayも、「当時から今に至るまで、インドには常にポテンシャルがあった。変化したのはディープテック・エコシステムが形成され、ビジネスのスピードが上がった点だ」と振り返る。

インド政府によるディープテック支援と、さらなる発展の余地

Shailesh氏は、インド政府が近年ディープテック分野に注力しており、製造支援のための補助金提供や、AIモデル訓練用に約3000個のGPUをスタートアップに提供していることを紹介。併せて、新たに5つのインド工科大学(IIT)設立を発表したことにも言及した。

Shailesh Lakhani氏

「政府はスタートアップ・エコシステムの高度化に向けて帯域を拡大しようとしている」取り組みについて語り、さらにインドの閣僚が「VCがディープテックに十分な支援をしていない」と苦言を呈したことにも触れた。

その一方で、インフラ整備の遅れは依然として大きな課題であり、「まだまだ整備の余地がある」と指摘している。

IPO増加とエグジットの環境整備

次にJayはインドにおける2024年のIPO市場の好調ぶりに触れ、「250社以上が上場した」と紹介。この年が例外的であったか否かをShailesh氏に質問したところ、

「確かに追い風だった」と語り、「今や売上が5,000万〜1億ドル規模で成長率が妥当であれば、インド国内で十分に上場できる」と述べ、併せてM&A市場も整備されている現状についても語った。

インドでは「エグジットが難しい」という課題があった中で、このようなIPO環境の整備は「過去10年間で最も大きな変化の一つ」である。これはVCにとって非常に大きな進展であり、「資金の循環が生まれ始めている」と、述べた。

「インド×日本」連携の可能性

最後に、観客から「Flipkartのような企業が日本で生まれる可能性」や「日印間の類似点・相違点」について質問が寄せられた。

Shailesh氏は「VCはローカル性の強いビジネスであり、市場の特性を深く理解する必要がある」としながらも、「日本にはここ10年ほど、投資資本の流入が控えめな印象を持っている。日本市場には大きな可能性はあるが、本格的な活性化にはもう少し時間がかかるのではないか」と自身の考えを述べた。

また日本企業がインド市場に参入する可能性については、「現地での製品ローカライズは大きな挑戦だが、関税や優遇制度、インセンティブなどの制度を活用することで、十分な見返りが得られる」と述べ、スズキの成功事例を紹介。インド市場に参入するには、時間もかかり忍耐を要するが、決して不可能ではないことを示した。

インド市場は「非常に忍耐を要する」市場であることに触れ、「製品の仕様を現地に適応させ、ローカライズを図り、サプライチェーンを再構築する必要がある」とし、その具体例としてAppleがiPhoneの製造をインドへ全面移管した事例を紹介。複雑な製品を作るための人材やサプライヤーのエコシステムが整っており、急速な成長を促す環境を紹介した。

「日印の連携の可能性」についてShailesh氏は、「両国、そして政府間でも協力できる分野は多い」と回答。 「日本で生まれた先進的な研究は、インドで製品化されることで、インドから他の新興国市場へも展開可能になる」とし、再びスズキとマルチの連携事例、ホンダのバイク事業について語った。

Jay Krishnan

最後にJayも「今ほどインドと日本が世界のために協力すべき機会はない」と今後の日印連携への期待を高める言葉でセッションを締めくくった。

2025年5月7・8日に開催したTECHNIUM Global Conferenceには、2日間で約2000名が参加しました。500件以上の最先端技術・研究シーズのShowcaseがあったほか、医療・創薬・バイオ・クライメートテック、宇宙、AIなど分野別のセッションも数多く開催。そのほかにも、研究者、スタートアップ、投資家、事業会社が集う実践的なネットワーキングの機会も提供しました。商談・マッチングブースでの面談件数は1000件にものぼり、賑わいを見せていました。

TECHNIUM Global Conference
公式Webサイト:https://tcnm-gc.com/

Akito Arima

Akito Arima

Partner

Keigo Yato

Keigo Yato

Venture Capitalist