Beyond Next Venturesが共催として参画した、日本初のディープテックに特化した国際カンファレンスである「TECHNIUM Global Conference」。日本のディープテックスタートアップを牽引するトッププレイヤーが集結し、多数のセッションが行われました。
本カンファレンスは完全招待制で開催され多くの反響をいただいており、当日ご来場が叶わなかった方にも内容をご紹介したくセッションレポートを公開いたします。
イベントレポート2では、当日開催された“日本のtop tier VCが語る未来”についてご紹介いたします。
日本のtop tier VCが語るディープテックエコシステム:20年の歩みとこれからの挑戦
モデレーター
ー奥田 浩美(株式会社ウィズグループ 代表取締役)
登壇者
ー郷治 友孝(株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC) 代表取締役社長CEO・マネージングパートナー)
ー赤浦 徹(インキュベイトファンド株式会社 代表パートナー)
ー伊藤 毅(Beyond Next Ventures株式会社 CEO / Managing Partner)
「研究者で起業というのは、ちょっと変わった人がやることだった」
これまでの20年で、ディープテックのスタートアップとVCが直面してきた数々の困難に聴衆はじっと耳を傾けた。
5月7日、日本初のディープテックに特化した国際カンファレンス「TECHNIUM Global Conference」が幕を開けた。冒頭に登壇したのは、「大学発ベンチャー」と呼ばれていた黎明期からこの領域を支え続けてきたベンチャーキャピタリストたち。
セッションに登壇したのは、郷治友孝氏、赤浦徹氏、伊藤毅の3人。モデレーターを務めた奥田浩美氏の問いかけに、3人はそれぞれの立場から、過去20年の挑戦と手応え、そして今後の課題を語った。
話は2000年代初頭までさかのぼる。郷治氏がUTECを立ち上げた当時(2004年)、大学の研究者が起業を目指すのはかなりまれなことだった。赤浦氏は「赤字が長く続けば、銀行からもお金が借りられなくなる。ディープテックは事業化の道半ばで資金供給が途絶えて終わってしまうような時代でした」と振り返る。

それでも彼らは、大学と産業界の間に道をつくろうと試みた。ファーストキャリアをジャフコのキャピタリストとしてスタートした伊藤は「大学発ベンチャーに必要な支援がまったく足りていなかった」と振り返る。そうした課題意識からBeyond Next Venturesを創業。大学に眠る技術の芽を、事業として形にするための仕組みを築いてきた。
セッションでは、そうした挑戦の背景とともに、転機となった成功事例も挙げられた。「宇宙ベンチャーのispaceや半導体関連のスタートアップなど、社会にインパクトを与える事例も現れはじめた」(郷治氏)。郷治氏は「やっぱり人に影響を与えるのは、ロールモデルだと思う」とも語り、次の挑戦者が生まれる好循環が始まっていることを示唆した。
社会にインパクトをもたらすディープテック企業は投資家にも変化をもたらす。赤浦氏は「インターネットの変革期にいたので、最初はそういった(IT系の)会社から始めました。ところが、2014年のispaceとの出会いをきっかけに、宇宙を一生懸命やっております」と語った。
伊藤は「この10年で成功事例が出てきた。次は、ユニコーンとなるような大学発ベンチャーを生み出す番です」と語ったうえで、「今回のカンファレンスにも、起業を考える潜在的な経営人材が来てくれています。そうした人たちに、ディープテックの有望なシーズを示す場をもっと増やしたいのです」と続けた。
制度だけではない。資金や人材の連携、そして社会との接続──こうした構造をいかに育てていくかが、次のステージでは問われる。赤浦氏、郷治氏は、日本の金融資源の活用や、国の政策との接続の重要性にも触れた。
モデレーターの奥田氏はセッションの終盤、「今日のメッセージのキーは、ちゃんとした研究をやること。それが世界に響くものであれば、日本のスタートアップエコシステムが支えてくれる時代になってきました」と振り返った。「日本には、まだまだ眠っているお金がたくさんあります。私たちが積極的に発信し、日本のディープテックの可能性を外に向かって示していくことが重要です」。

ディープテックは、もはや一部の夢追い人のものではない。研究の現場にいる誰もが挑戦の主体となり、その背中を後押しするエコシステムが、いま確かに立ち上がりつつある。そのことを強く感じさせる時間だった。
2025年5月7・8日に開催したTECHNIUM Global Conferenceには、2日間で約2000名が参加しました。500件以上の最先端技術・研究シーズのShowcaseがあったほか、医療・創薬・バイオ・クライメートテック、宇宙、AIなど分野別のセッションも数多く開催。そのほかにも、研究者、スタートアップ、投資家、事業会社が集う実践的なネットワーキングの機会も提供しました。商談・マッチングブースでの面談件数は1000件にものぼり、賑わいを見せていました。
TECHNIUM Global Conference
公式Webサイト:https://tcnm-gc.com/