アーリーから上場後まで、スタートアップ内で弁護士ができること|スタートアップで働く弁護士の学び場vol.1

本記事は、2021年8月19日に行われたシリーズイベント「スタートアップで働く弁護士の学び場」の第1回レポートです。

近年増えつつあるスタートアップや事業会社で働くという弁護士のキャリア。そこには法務に加え、経営や事業にも関わる場があります。一足先に踏み出した3名に、現在の仕事内容やスタートアップを選択した理由について伺いました。

<インタビュー対象者>

LINE株式会社 法務室 室長 葛城 新平氏
株式会社MICIN Public Affairs/Legal 浅原 弘明氏
株式会社カンリー コーポレート部 勝連 孝司氏

<モデレーター>

Beyond Next Ventures株式会社 執行役員 鷺山

パネルディスカッション「スタートアップの中でできること」

事業会社内の法務としてはどんな体験がありますか?


勝連:今は労務、知的財産権、独占禁止法的な対応や、IPOに向けての対応が多いです。あとは、利用規約を使用して契約を締結するように業務フローも整備しています。労務管理系では、カンリーはフルリモートかつフレックスを導入する予定があるので、その中でどういう労務管理体制を敷くかも考えています。

法律事務所の時のように、外部の法律の専門家として関わるのとは異なり、業務フローを整えて効率化していく、何もないところから法律の知見を活かしつつ制度を作る、みたいなことが多いですね。事業を整備する仕事は面白くて、こういう仕事がしたくて入ったという背景もあります。

浅原:私はエフォートを50%:50%で、パブリックアフェアーズとリーガルを担当しています。スタートアップらしい法務としては、MICINは資金調達もしているのでファイナンス関連の対応も結構あります。

私たちは医療機器の規制業種でもあるので、規制対応や、その規制の中で事業をどう進めるべきかがクリアになっていない時に、進めそうな方向を戦略的に定めることにも関わります。事業が始まる前からゴリゴリと議論に入っていく場面もあり、そこは特徴的だと思います。

同じ業種でも大手企業の中だと規制対応は薬事部などの別部署が担当するケースが多いので、そこも丸っと自分でみられるというのは良い経験になっているところです。

鷺山:LINE葛城さんは法務が100%で、かつチーム規模も数十名という中で、どんなお仕事を担当されていますか?

葛城:今は法務室長という立場で、自分で契約を見ることは少なくなりました。ただ、マネジメントに特化しようと思えばできる環境ですが、自分でプレイヤーとしてもやりたい気持ちが強いので、大きな投資案件や重要度の高いプロジェクトを中心に実務対応も担当しています。ざっくり、プレイングマネージャーとして、プレイヤー5割、マネージャー5割という働き方をしています。

会社では新規事業も多く立ち上がり、スピード感を求められる環境です。なので、法務がボトルネックで事業を止めることがないようにスピード感が求められます。以前出向していた企業もスピードは早い方でしたが、そこと比べてもテック系のスピード感は違うと感じています。

新しい挑戦で、新しい成長が始まる

鷺山:浅原さんがパブリックアフェアーズを兼務されている背景を教えてください。

浅原:法務として手伝っている中で、丁度そのポジションがあり、やってみたという背景です。でも実際にやってみたら意外と親和性があり、これはルールの裏と表なんだなと。自分が興味のある医療ヘルスケア分野を、仕組みが作られていく反対側から関われるというのは良い経験です。

鷺山:弁護士の経験が生きているところはありますか?

浅原:はい。この仕事は、今のルールに対して自分たちにそぐわない部分を変えていく活動です。論点を抽出するには法律を読まないといけません。一般の人が読む気がしない文章を、苦痛じゃなく読めるというのが一つ。あとは、通達や行政文書を読む必要があって、法律や行政法などそこの肌感があることは生きています。

鷺山:勝連さんは、20%は経営企画を担当されているそうですが未経験でできるものですか?

勝連:単独ではなく、公認会計士資格のあるCFOの方や社内の元経営コンサルの方と連携しながら進めています。その知識は全然なかったので必死に頑張っています。今まで弁護士として数字を扱うことはないのでOJTでやってます。とりあえずやってみろみたいな(笑)

鷺山:そこにどんな成長がありますか?

勝連:自分が知らなかったことが多いなと思います。財務諸表の読み方もそこまで深く考えたことはなかったですし、ましてやスタートアップの予算やKPIの設定の仕方などは全く考えたことはなかったので、非常にいい経験だと思います。

また、資金調達に伴ってVCや銀行と話す機会もありますが、法律事務所にいた時には学ぶことができなかった、「VCや銀行がどこを見てお金を出しているのか」の肌感覚も徐々についてきました。将来的に更に経営に関わりたいので、お金を集める能力が身につくのは良い経験になっています。

鷺山:LINEさんは、新しい事業領域を法務が支援されることも多いと思います。その点で成長を感じる部分はありますか。

葛城:ありますね。これまでに先例のないビジネス、例えば暗号資産などフィンテック領域の事業を立ち上げる際は、過去の金融サービスとは違う規制対応を考える必要があります。LINEはさまざまな新規事業にチャレンジしているので、その意味で、常に学びはあります。

あとは、私個人のタスクとして企業のガバナンスやリスク管理について関与することも増えており、新しい領域なのでストレッチになっています。

なぜスタートアップ・メガベンチャーへ?

勝連:私の場合は、勢いです(笑) 元々事業や経営に興味がありました。そんな時に、偶然ビジネスマッチングアプリで今のカンリーの代表に会って強く口説かれまして。上場を目指すステージも良いかなと思ったのと、弁護士業をやりながらでいいという話もあって、事業会社に行ってみようかと思いました。

鷺山:迷いましたか?

勝連:迷いましたね、収入も変わりますし。実際は話した翌日にはほぼ決めていたんですが、最後決めきるまでには弁護士仲間にも相談しました。

浅原:私の場合は、留学から帰国後は医療・ヘルスケアで活動をしたいと考えていました。特にスタートアップに興味があったので、まずは知り合いを増やそうと色々な人と会っていました。

その時に、ひょんなご縁で、知り合いが現職MICINのCFOと繋がりがあり、ちょうど弁護士も募集していると。まずは一旦中に入ってみようと、週3日位で業務委託を始めました。

フルコミットの判断はだいぶ迷いました。1社に入るべきか、広く関われる立場がよいのか。フルコミットする側に意思決定をしたのは、コロナがきっかけでした。目の前で、今まで3~4年動かなかったオンライン診療規制が、時限的とはいえ一晩で変わったり。「嵐が吹いているところが楽しそうだ。ここで、法務とパブリックアフェアーズを両方させてくれるなら面白いんじゃないか」ということで決めました。

鷺山:葛城さんは現職(LINE)に入る前に、その領域の法務経験なしということで転職活動で苦労された場面もあったそうですね。分野の違う法務への転職は難しいのでしょうか?


葛城:一般的には、一人法務体制の会社だと、これまでその領域の法務をしたことがない方に、いきなり一人で任せるのは難しいと思うんですよね。逆に、例えばLINEのような大手企業であれば、即戦力でなくてもポテンシャルのある人が活躍できる余裕があります。未経験の方には、ある程度受容力のある大手に入って経験を磨くという選択肢もあるかもしれません。私の場合もそういう意味合いも含めて現職を選択しました。

法律事務所から事業会社への転職の際に年収がネックになるケースも多いと思いますが、ワークライフバランスも考えての判断になるかと思います。事業会社であれば、事業に近いところで仕事ができるので、ビジネスに興味がある人はインハウスでやることは価値があると思います。

スタートアップはなぜ弁護士を求める?

イベント後半では、現在弁護士を募集しているスタートアップの紹介も行いました。

1. 株式会社I’mbesideyou(アイムビサイドユー)
●概要:オンラインセッション参加者の表情・音声を解析し、参加者一人一人の反応をフィードバックするサービスを企画・開発。
●募集:日印で事業を展開するにあたり、英語+個人情報保護法制にお詳しい弁護士様、副業可

2. アイリス株式会社
●概要:深層学習(人工知能技術)によって医師のもつ匠の技をデジタル化。咽頭の画像をもとに画像診断技術を用い感染症を診断する機器を開発。
●募集:AI医療機器の市場投入に向けて、事業企画・事業推進に関わりたい弁護士様、副業可。

※現在、LINEでも弁護士の募集を行っているとのこと。ご興味あればお繋ぎしますので、鷺山までご連絡ください。

最後に

「弁護士の学び場」では、実際にスタートアップや事業会社でのキャリアを歩まれている弁護士の方をお招きし、新しい弁護士のキャリアモデルを模索してまいります。今後のキャリアを模索されている方は、ぜひ当社までお問い合わせください。
https://beyondnextventures.com/jp/contact/

Shota Sagiyama

Shota Sagiyama

Executive Officer, Head of HR Support