戦略コンサル入社3年、起業・準創業参加のリアル / エレファンテック CEO 清水 信哉

2020年10月24日に開催されたイベントの「戦略コンサル入社3年、“起業・準創業参加”のリアル」の開催レポート【第一部】です。

清水 信哉
エレファンテック株式会社 代表取締役社長
東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程修了

自己紹介

エレファンテック株式会社は東大発の技術系ベンチャーで、より環境負荷少なく電子回路をつくる技術を開発しています。エレクトロニクス産業はグローバルにはめちゃくちゃ今後も伸びていくと言われていますが、実はものすごく環境に悪いんです。

例えば電子回路・ものづくりの街とも言われた中国の深圳では、環境の問題によって新しい電子回路産業ができなくなっています。今何が起きてるかというと、昔は日本でやってたのが、次に中国の沿岸部にいって。そこでできなくなって、山奥へ行き、今はインドと。電子回路産業が環境規制の緩いところに追いやられている現状を解決するというのが、我々が取り組んでいるテーマです。

コンサルでエレクトロニクス業界をやられていた方は聞いたことがあると思いますが、(電子回路づくりには)エッチングという作り方があります。金属膜を生成して、金属膜のいらない部分を全部エッチング液というのに溶かして捨て、残った金属部分を配線として使うという方法です。

そうすると、使った銅の7割を捨てることなるので、非常に環境負荷も高くて無駄も多いと。そこで、不要な部分を溶かして捨てるのではなく、必要な部分だけ金属を印刷する技術が開発できれば、非常に環境にいいですよね、というのが根本的な話で、その技術を世界で初めて量産化した会社を経営しています。

起業のきっかけ

私は、マッキンゼーに約2年間おりまして。2014年に会社辞めて東大の先生と一緒にこの会社を創業しました。元々東大で電子情報工学科で機械学習やAIを学んできました。そこからものづくりにいった背景は、ピュアIT、特に機械学習の領域だとアメリカに勝つのは無理だなと思って。

では世界に勝てるようなことは何だろうと考えた結果、ものづくりはすごくいいなと。しかも、電子回路のような世界の基本的な部材を新しい手法で置き換えることができると、「グローバルにインパクトがある」と思い、始めました。

ただ、私がこの技術を持っていたわけではないので、先生に色々教えてもらいながら、2014年の創業から丸4年くらい研究開発をやっていて。鳴かず飛ばずというか、「全くものが作れません」みたいな状態で研究開発をやっていました。

2018年に小規模ですがようやく世界で初めて印刷の製法で電子回路をつくれる拠点をつくりました。そこでお客さんがついてきて、今まさに名古屋に大型の量産拠点をつくっている段階です。弊社の電子回路は、量産にも使われていて、家電量販店で買える既存の量産品にも使われています。

私は、大学にはたくさん良い技術があると思っています。が、世に出す人が全然いないという課題感があって。特に日本だと、どうしてもアメリカに比べるとファンディングの規模が小さくなりがちです。そういう中で、どうやったら最大の資本効率で良い技術を社会に広げていけるかというのが、非常に悩ましい点です。

今回の事業も、正直言うと大学の先生だけでは無理だった話で。このままだったら大学で朽ちていったであろう技術、またはアメリカで先行が出てきて負けていたところを、大学から引っ張り出して量産化まで持ってこれたのは、やりがいがあったし、難しかったし、価値があったと思っています。

マッキンゼー入社時から起業も視野に?

はい、マッキンゼーの面接時に「起業しようと思っているので2-3年で辞めます」と言いました。正直言うと、元々大学で研究者になろうと思っていましたが、実は課題は、大学に研究をやる人がいないのではなく、研究を世に出す人がいないのでは?と気づいて。それなら一旦マッキンゼーいくか、と。

なので(マッキンゼー在籍時の)最後半年は、色々な大学の先生と会って、ニーズや技術シーズを探す活動をたくさんやってました(笑)

環境負荷や社会的インパクトの領域にも興味が?

元々は、そこまで環境とか興味はなかったのですが、起業する=自分の5年・10年を捧げることになるじゃないですか。やるんだったら、世界的に意味があることをしたい。人類の歴史に残るし、自分がいたことで人類の科学の進歩早まったということをしたいと思って。

イーロンマスクが、
「別にEVが売れなくても、世界がサスティナビリティに向けて、テスラの存在で10年、20年早く世界が進んだら、それでテスラの価値はあった」
と言っていると思うんですけど、そういうことをやりたいなと思ってます。

創業を共にした研究者との目線合わせは?

今一緒にやっている先生は、ベンチャー創業するのは3社目位で、ベンチャー(スタートアップ)に対する理解が早かったというのはあります。一方で、多くの研究者は、すごい技術を持っていてもどう使っていいかわからないという人も多く、その技術が目指す目的には使えなかったりするケースもあります。そこは正直、数をあたりましたね。

転機をつかむタイミング

私は25歳の時に(マッキンゼーを)辞めましたが、結構時間ないなと。自分の時間って本当に、絶対戻ってこないリソースで。
25歳で1個挑戦して10年やったら35歳じゃないですか。35歳できることって限られてくるっていうと言い過ぎですが、例えば子供がいるかもしれないですし。ちょっと待てよと。いまやるしかないっ!と辞めたというのはありますね。

コンサル経験で生きること

人間って、2-3個できない理由が見つかったら普通諦めちゃうんですよね。でもコンサルの人って違うじゃないですか。そんなんで諦めたらコンサル首になっちゃうんで(笑)じゃあ、規制はこうやれないか?お金が必要ならこうやれないか?みたいにやれる方法を探せる人って希少です。それをコンサル出身の人は持っている。めちゃくちゃ貴重なリソース・能力です。

逆にコンサル経験がスタートアップでリスクになる場面は?

私は、自分自身がコンサル的な考え方をアンラーン(unlearn)するのに多少苦戦しました。今は事業が大きくなってきたのでコンサル的でもいいんですが、本当のゼロイチの創業で、エンジェル投資を集めるときは、事業計画が面白くないっていうか。

コンサルって基本的に100を110にする職業なので、「君のアイディアはいいんだけど、そうじゃなくて90%位失敗するけど、うまくいったら何千倍になるかもしれないっていうのが伝わってこない」みたいなことを言われて。細かい計画とか別にそこまできっちり詰めなくてもいいんじゃない?みたいな。もっと、”ざっくり市場があって、こんなんでいいじゃない?” みたいなのはシード、創業時にありがちなんですけど。そこは自分自身、最初はしっくりこなかった部分がありましたね。

イベント参加者へのメッセージ

好き勝手言いましたが、戦略コンサルにいる人が持つマインドセットにはめちゃくちゃ価値があると思ってます。本当はまだまだ解決できるけど、誰もやってないから解決されてない課題はいくらでも存在していて。

どう解いたらいいかわからないような課題を解決することは、コンサルの人が一番向いている。本当に技術をわかっている研究者の人よりも向いていると思っています。ぜひそういうところに力を発揮してほしい。それはVCという形でも、自分で起業という形でも、共同創業という形でも何でもいいと思うんですけど。そうなると世界がもっと良くなっていくと思ってます。

最後に

Beyond Next Venturesでは、研究者との共同創業に興味がある方、スタートアップ経営や起業に興味があるビジネスパーソンの皆様を応援しています。キャリア相談も受け付けておりますので、ぜひお問い合わせください。
https://beyondnextventures.com/jp/contact/

Shota Sagiyama

Shota Sagiyama

Executive Officer, Head of HR Support