TALENT

【インタビュー】「机上の空論から脱却」するために、社外プログラムが果たす役割

2020.04.30

「机上の空論から脱却」するために、社外プログラムが果たす役割―田辺三菱製薬 髙熊氏、新島氏

Beyond Next Venturesが提供する起業家/社内起業家育成プログラム、「Innovation Leaders Program(ILP)」の第7期に参加をされた、田辺三菱製薬の新島さん、髙熊さんにインタビューを実施。卒業生2名が語る、プログラムに参加する意味。そして、創薬研究者と共に事業創出を行う中で感じたこととは?

今回インタビューにご協力いただいたお二人

髙熊万之(たかくま かずゆき)さん
田辺三菱製薬株式会社 創薬本部 創薬基盤研究所

田辺三菱製薬に入社し生化学や分子生物学等を専門として創薬研究に従事した後に,経営企画部に異動して新規事業推進部門の立ち上げに携わる.その後,経済産業省に出向し,同省ヘルスケア産業課 課長補佐としてベンチャー支援や新事業創出にかかる政策の立案・推進に従事.昨年4月より現職.

新島麻貴(にいじま まき)さん
田辺三菱製薬株式会社 創薬本部 創薬プロジェクト部

田辺製薬に入社、長年メディシナルケミストとして創薬研究に携わる。昨年4月より現職、複数プロジェクトのトランスレーショナルリサーチを担当。

 

Q、期間中どのような支援活動をされていましたか。

新島さん(以下、新島)

私が支援させていただいたチームは、低分子化合物最適化の最終段階にあり、本プログラム期間中の起業を目指していました。

そこで、これまで20年以上従事してきたメディシナルケミストとしての経験を活かし、化合物選抜のために必要な試験やデータの取り方、合成方法や合成量、化合物特許取得と起業のタイミングなどについてアドバイスしました。

また、現在携わっているトランスレーショナルリサーチの観点から、プロジェクトの魅力がうまく伝わる発表資料になるよう、アドバイスや議論を行いました。

高熊さん(以下、高熊)

私も起業前の研究チームに参画しまして、ブレストによる事業アイデア出し、ヒアリングにより取り組む課題(解決すべき課題)の設定,市場調査,事業計画の作成などを行いました。

とくにビジネスをつくっていくための市場の選定や規模の数字のつくりかたは、アカデミアチームの弱い部分だったのでうまく補完関係を築けたと思います。

Q、日常的な業務と同時に参加されていましたが、どのようにバランスを取っていましたか。

新島

今回のプログラムは通常の業務に加えての活動でしたが、ちょうど子供たちが大きくなり、自由にできる時間が増えてきたタイミングでしたので、その時間を新しいチャレンジにあてることにしました。

支援するチームは、自分の経験やスキルを生かして貢献できると同時に、今やっている業務の幅が広がる知識や経験が得られそうなところ、という観点で希望したので、通常業務との折り合いをつけるというより、通常の2倍多く学べるチャンスをいただいたと感じています。

高熊

プログラムから得たいスキルや経験を事前に明確化できていれば、メイン業務とプログラムを一気通貫で取り組むのは十分可能と感じました。

このプログラムでは、プレイヤーの一人として支援先に参加するわけですが,チームメンバーと同じ立場で自分の手を動かすわけではありません。ですので,コミットする時間や量よりも、アイデアやアドバイスの質を求められたと考えています。

Q、今回のプログラムで得られたことはなんですか。

新島

コンパクトなスタートアップならではの、自ら事業全体を俯瞰して物事を考える経験は貴重でした。

導出のタイミング、外部から資金を調達する方法と選択、資金調達のためにベンチャーキャピタルに行うプレゼンと導出のために製薬会社に行うプレゼンとの違いなど、多くのことを議論し学ばせていただきました。

プログラム内プレゼンの結果、選ばれて研究資金を調達できたことも、嬉しい経験でした。

また、社外から客観的に自分のことを見られることで、自分がもっているスキルに対する理解が進んだのは大きかったです。

大きな組織では業務の分担が進んでおり、自分が担当している領域には、似たような経験をし、教育を受けている人が多い。また、会社にはこれまでに培ってきた膨大な経験に基づく「ノウハウ」があり、私たちは基本それをベースに物事を考えるため、自分のスキルを客観的に把握するのは容易ではありません。

一方、スタートアップでは様々なバックグランドの人が混在しており、ベースになる「ノウハウ」がありません。自分では当たり前だと思っていたスキルが、社外では思いのほか役にたつと分かったりするわけです。

高熊

足りていないスキルの解像度も上がりますね。例えば,今回のプログラムでは、市場規模の考え方について学びがありました。

私が勤務している製薬メーカーでは、事業計画をつくる際に積み上げ式で市場規模や行動目標を考えることが多いです。しかし今回サポートしたスタートアップでは、大きな目標を決めてから、そこに辿り着くための方法を考える「バックキャスト的な」考え方をより求められました。

また意見がまとまりにくく、議論が白熱することもありましたが、多様なメンバーで専門領域や考え方の壁を取り払って考えることで、自分ひとりでは考えつかないアイデアに辿りつけることを実体験できたのも大きかったです。

新島

実績を持った人と、密にコミュニケーションをとれたのも貴重な経験でした。

大手製薬会社研究所長レベルの経験をした後に、自分でベンチャーを立ち上げて売上を立てているメンターの方がいました。その方の意見をお聴きしたり、議論させていただいたりする機会が、プログラム中には頻繁にありました。

また、プログラム内で講演も聴くことができ、創薬にとってのTR(Translational Research)の重要性や大手企業とベンチャーにおける取り組み方、考え方の違いなども学ばせていただきました。

ここで得られた新たな知識や気づきは、自分の業務にも大いに役立つと思います。

Qどのような人にプログラム参加をおすすめしたいですか?

新島

社内で新規事業を立ち上げたい人には、ぜひ体験して欲しいです。

世の中には起業や新規事業について書かれた本も多くでていますが、本で読むのと体験するのはまったく異なります。自分と相手がおり双方向のコミュニケーションが取れる状態で学べるので、身につき方も変わるでしょう。

また社外での活動は、幅広いバックグラウンドの方々から多くの情報が得られ、視野も大きく広がると思います。新規事業向けの社内研修で経験できることとは、大きく異なります。

高熊

仕事に対してコスト意識をもてるようになるのも、大きなプラスポイントだと思います。事業規模が大きい会社では、普通に働いていれば研究費や給料が出ますよね。何にいくら使っていて、そのコストがどのようなインパクトを会社や事業に与えるかを逐一把握している人はほとんどいません。

そういったコスト意識が、スタートアップを経験すると変わります。ギリギリ状態で資金調達をして、それでも足りないときは自身の給料も削って研究活動をすることもあるわけです。

コストに対するシビアさや、成果の創出にコミットする本気度が違います。事業に対するハングリーさを目の前で感じられるのは、このプログラムの良さですね。ご自分で事業をつくりたい方は、一歩踏み出して体験してみて損はないと思います。

これからは私たちが所属する製薬会社も、自社だけでの成長は難しい時代だと考えています。産業のエコシステムを構築し、その中でスタートアップや新規事業を成長させることで、大企業も成長する「両輪の成長」が必要と感じています。

その両輪の成長を実現するために、これまで以上にイントレプレナーの役割が重要になっていくでしょう。新しい事業をリソースやチャネルを多く有する大企業がつくった場合、スタートアップと比べ一度に大きなインパクトを社会に与えられる可能性があるからです。その中核を担えるイントレプレナーが、今後必ず求められます。

このプログラムを卒業したからには、そういった役割を担える人材になりたいと思っています。

POPULAR INSIGHT

  • 大学発ベンチャーへ踏み出す研究者に必要な…

    Beyond Next Venturesは、日々研究者の皆さんと議論しながら、その事業化を共に推進しています。近年は政策……

  • 【社員紹介】"イケてる技術にときめく!”…

    Beyond Next Venturesにおいて、3人目の参画者であるキャピタリストの金丸に自身のこれまでの経歴と現在、……

  • 【インタビュー】「机上の空論から脱却」す…

    「机上の空論から脱却」するために、社外プログラムが果たす役割―田辺三菱製薬 髙熊氏、新島氏 Beyond Next V……

  • 博士卒を活かしてスタートアップ起業家とい…

    日本では、博士号を取得後に、その高度な教育を生かした職に就くことが難しい現状があります。 そこで今回は、博士号を取得し……