アグリテック・フードテックShowcase2021:第4回 スタートアップが “代替肉”を変える~培養肉、昆虫食、植物肉~

本記事は、2021年8月~12月に開催された「Agri/Food Tech Startup Showcase2021」の「第4回:スタートアップが、“代替肉”を変える」のイベントレポートです。次世代の食・農をテクノロジーでリードするスタートアップ経営陣×VCの対談をぜひご覧ください。

第一部:日本の代替肉の現状、課題

有馬:「代替肉・代替タンパク」が世に出てくるに至った社会的な背景が主に2つあります。

タンパク質クライシス

世界的な人口増加&食物消費の増加によりタンパク質の需要と供給が2025~2030年にかけて逆転すると言われています。タンパク質需要は2005年→2050年にかけて210%の増加が見込まれている一方で、2050年までの4大穀物の供給量は需要量を下回ると言われています。(出典:ちとせ研究所)

環境への配慮

現在のタンパク質生産には以下の環境的な課題もあります。

  • 家畜による温室効果ガスの排出
  • 家畜用飼料のための森林破壊

前者は、温室効果ガス全体の14.5%に相当すると言われています。
後者は、牛肉1kgの生産に必要な穀物の量はなんと11kg(豚肉生産には7kg、鶏肉生産には4kg)もの穀物が使用されています(出典:農林水産省)。そのため家畜の飼育に必要な農業用地は大きくなり、現在は農業用地全体の77%を占めています。しかし家畜由来のタンパク質の供給量は全体の37%と、農地面積と供給バランスが釣り合っていないという現状があります。(出典:Our World in Data)

上記以外にも、高密度飼育の倫理的な問題や、抗生物質の過剰使用、新規感染症の原因等さまざまな社会課題が存在します。

このような背景から、いま世界的に代替タンパクへの注目度が高まっています。代替タンパク質の世界市場規模は、2025年で約6732億円、2030年には約1兆8732億円に達すると予想されています(出典:矢野経済研究所)

例えば海外ではえんどう豆を利用するビヨンドミートと、大豆を利用するインポッシブル・フーズがユニコーン企業(設立10年未満かつ非上場で時価総額1000億円)を超える数千億~1兆円規模の企業価値をたたき出しましたね。

また、「培養肉」に関しても、2019年には数十社にまで増加し、牛・豚・鶏だけでなく、海産物の培養肉や、培養肉を育てるための材料を販売するなど多方面のスタートアップが世界中で生まれています。

そして、「昆虫食」マーケットも拡大傾向にあり、2025年には市場規模が約1,000億円に達すると見込まれています。生産時の環境負荷が少ない傾向にある昆虫食は、サステナブルへの意識が高い欧米を起点に、最近では日本でも昆虫食関連のスタートアップが増加しており、2019年には国別で第2位(33企業)にランクインするほどです。

第二部:パネルディスカッション「スタートアップが代替肉を変える」

<インタビュー対象者>

株式会社グリラス 代表取締役 渡邉 崇人氏
インテグリカルチャー株式会社 代表取締役CEO 羽生 雄毅氏
グリーンカルチャー株式会社 代表取締役 金田 郷史氏

 

各社の10分ピッチ動画はこちら

グリラス
インテグリカルチャー
グリーンカルチャー

 

どのような顧客に、どういったアプローチを?

渡邉:「コオロギ」を活用しているという点で現状は躊躇される方が多いです。なので、我々のストーリー「フードロスを使って、新たなタンパク源にアップサイクルしていく」に共感していただける方に、まずは販売していく段階です。

同時に、コオロギ全体を粉にしていることで肉よりも機能性は高いです。なので「美容に良い」とか「腸活」といった機能性食品としても販売することで、機能性を求める層にもリーチしていこうと考えています。

羽生:弊社は培養肉を作る技術を売る会社なので、実際にどういう商品がお客様のもとに届くのか、どういう消費者がターゲットになるのかは、弊社の直接顧客である食品会社さんの一存になるところではあります。その上で、弊社自身でもデモンストレーションとして培養フォアグラも作ります。この業界では、培養フォアグラはそもそも高級食材ですし、我々の生産ボリュームとの兼ね合いから、まずは新しいものに興味のある富裕層から徐々に拡げていこうと思っています。

金田:我々の植物由来肉の場合、元々ベジタリアン・ヴィーガンからはじめていました。最近では、「野菜中心・肉を減らしつつも肉を摂りたい方」が増加傾向にあるということが分かっています。つまり、肉か野菜かという二者択一ではなく、その中間に「プラントベースの肉」が位置する、肉⇔野菜のコントラストを埋める中間の商品として市民権を得ていくのではないかと予想しています。

有馬:植物肉は世界中で消費者に受け入れられてきていますよね。

金田:はい。北米や欧州では「ヴィーガンじゃないけど植物肉を食べたい」という真ん中のニーズがあるので、日本においてもそういったニーズを拾うことが大事だと考えています。

商品の賞味期限はどのくらい?

渡邉:商品を販売し始めてからまもない今の段階では、数か月以内なら大丈夫というのは見えております。コオロギの中にも油分があり酸化していくので、それによって賞味期限を設定していかなければいけません。

羽生:培養肉全般の話と、うちの培養フォアグラのような個別商品についての話があります。培養肉全般については、無菌で作っているため消費・賞味期限は長くなり得ます。培養フォアグラという商品に限っては、これから検証が必要ですが、無菌なので同様に消費・賞味期限は長くなり得る一方で、構造を支える筋のようなものが一切入っていないので、細胞自体が物理的に弱いかもしれない。なので、構造が崩れることで味が変化しやすいかもしれません。肉の熟成のように良くなる可能性もあります。

金田:グリーンミートという商品については、冷凍の形で販売しているため、冷凍の状態であれば半年以上持ちます。食べるときは冷蔵で解凍いただきますが、冷蔵保管してから5-6日間が賞味期限なので、一般の肉と比較して賞味期限が少し長いという特徴があります。

他の代替タンパクへの見解は?

渡邉:将来不足するタンパク質を全て昆虫で賄えるとは思ってませんし、当然消費者の嗜好ありきです。そういう意味では植物肉、培養肉、昆虫はキレイな棲み分けができていくだろうと。他社さんについては「新たなタンパク源を供給しようとしている”タンパク質仲間”」という風に捉えています。実際次の商品にはコオロギ入れつつ植物肉入れてますから(笑)

羽生:基本的に渡邉さんと同じです。今後、食文化も多様化する中で全部の代替タンパクに居場所があるし、まだない代替タンパクも出てくると思います。空気から作るたんぱく質とか、新しい代替タンパクの登場を期待しています。

金田:ここで反抗的な意見を言いたいところですが、皆さんと同意見です(笑)渡邉さんや羽生さんがおっしゃる通り、食の選択肢だと思います。昆虫食を食べたい人って、なんらかの理由で昆虫食を選んでるわけですよ。植物肉も、培養肉もそうだと思います。それだけ切り口が違って選択肢になっているので、3種類が三つ巴の戦いになるとは思ってないです。

一方で、代替肉とひと括りにしてしまうと、各々の価値がごちゃ混ぜになり消費者にメッセージが伝わらない。つまり、各々がオリジナルの価値観やストーリーをしっかり打ち出していく必要性をすごく感じています。

日本と海外の受け入れ方の違いはある?事業の海外展開予定は?

渡邉:昆虫に限ると、日本では昔は当たり前にあって、なくなってきたという歴史があります。つまり「古いもの」という印象がある。反対に、欧米では「昆虫食=新しいもの」なので「最先端」というイメージが付いています。とはいえ日本では、食べていた経験から取り組みやすい部分もあるのかなとは思っています。

有馬:欧米では昆虫食が食べられてこなかった中で、大きく市場が成長すると予想されています。そこで欧米企業のマーケティングや戦略で参考になる部分はありますか?

渡邉:昆虫が「ノーベルフード(新しい食べ物)」として欧州の食料機関から認められたことはかなりインパクトが大きいです。つまり、お上が「これは新たな食べられる物ですよ」(寿司や刺身みたいなもんですよ)と言ったわけです。我々も、日本でノーベルフードとしての基準と規格を決めて、安心安全を担保する戦略が必要になると思います。

有馬:ありがとうございます。グリラスさんは将来的には海外に行く予定なんですか?

渡邉:はい。私は大学教員をやりながら会社を作ったので、当初の目的である「世界で飢餓に苦しんでいるところに我々のタンパクを届ける」というところまで必ずやり遂げなければならないと思っています。ただいきなりそこにいくのは無茶すぎるので、今は日本で経済基盤を構築している段階です。

次のステップとしては、途上国をターゲットに、途上国だからこそ出てくるフードロスをコオロギで解消して地産地消(※)に取り組みたいと考えています。そのステップで得られた知見を基に、最終的にはフードロスがそもそもないような飢餓地域に我々のタンパクを外部から届ける体制を構築したいと考えています。

※地産地消・・・地域生産・地域消費の略語で、地域で生産された様々な生産物や資源をその地域で消費すること

羽生:培養肉を食べたい人の割合は日本も海外もほとんど差はないです。資金調達環境や政府の支援環境まで含めると色んな話がありますが、シンガポールやイスラエルは「食料調達が国家の存亡危機」のような側面があるので、政府の支援やそれに繋がるアクションがアクティブです。日本もその観点でいえば、政府はかなり活発です。

当社の海外展開については、実はDay 0から取り組んでいます。共同研究からスタートし、出来上がったものを相手の工場に設置するというモデルです。現在国を跨いだ共同研究を進めている先の成果物(技術)が、そのまま海外に輸出されていくという展開です。

金田:まず海外と日本では「情報の速さ」「文化の変化の速さ」が違います。そのため、海外の消費者と日本の消費者がその製品に求める価値が、同じ時間軸なのに異なるのです。例えば「北米では今この価値が注目されているけど、日本ではそれに気づいておらず、全く違う価値が注目されている」という状況です。現状は商品を海外用にカスタマイズすることは考えていませんが、違う価値感をもつ消費者に刺さるような見せ方をすることが重要ではないかと思います。

また、海外の植物肉ベンチャーが数多くいる中で、ラインナップ・味・機能が今後細分化されていくと思います。その時に、我々の価値は「味付け」にあると思っています。「美味しさ」に焦点を当てて、畜肉との近似性ではなく、「植物肉でも調理性があって純粋に美味しい」という。そのように独自路線で売り出すことで違う場所で戦っていきたいと思っています。

事業会社との取り組み事例について

渡邉:我々の代表的な事業会社連携の事例は良品計画さんです。先方がコオロギのプロジェクトを立ち上げる際、「0ベースで事業を進めるのは大変だから、大学の研究者と共同でやっていこう」という経緯で、大学教員である我々を探しに来ていただきました。それがちょうど我々が起業準備していた時期と重なったので、ぜひ一緒にやりましょう!ということに。

一番大事なのは社会の雰囲気を変えていくこと。良品計画さんの「コオロギせんべい」が出て、世間の風潮が少しづつ変わってきました。今後も色んな事業会社さんと連携しながら共同開発を進め、「あの企業がやってるなら試してみようかな」というのを世間の皆様に感じてもらいたいです。

羽生:培養肉や細胞農業の領域での事業会社との連携は、抽象度の高い段階でスタートする傾向にあります。大規模な細胞農業という技術を使って、あんなことやこんなことができるかもしれない、という入口と、最終的な出口にはかなり幅があります。そこに納得した会社さんは「うちの会社のこの技術が使えるかもしれない」とか「細胞培養ができればうちでこんなものが作れるかもしれない」というレベル感で話が始まってきています。

金田:弊社の場合、今回の資金調達で事業会社さん2社とVCさん2社に入っていただきました。最近ではアクセラレータープログラムや、CVCや事業会社による直接出資みたいなケースもあり、起業家の選択肢が広がっています。ですが、「選択肢があるから、もらえるところからもらっておこう」という考えは後になって困ることがあるとも思っていて、「資金以外にどういう支援をしていただけそうか」はしっかり見た方が良いかなと。

有馬:確かに各社さん支援内容や強みなど異なりますもんね。資金に加え、自分たちに必要なことを一番支援してくれそうな会社さんと組むというのは、長期的な関係ならより重要な視点ですね。

最後に

Beyond Next Venturesでは、アグリ・フード領域をはじめ、医療、AI、エレクトロニクス、IT領域などにおける研究開発型スタートアップ・大学発ベンチャーへの出資・ハンズオン支援、創業前の研究シーズの事業化支援、起業や経営に興味のあるビジネスパーソンのキャリア支援活動などを行っています。

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Akito Arima

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