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大学発ベンチャーへ踏み出す研究者に必要な”10の心得”

2020.05.01

Beyond Next Venturesは、日々研究者の皆さんと議論しながら、その事業化を共に推進しています。近年は政策や大学自身の後押しもあり、ベンチャー化の流れが進んでいます。その一方、素晴らしい研究成果が、事業としての成功を掴むまでの日々は、数多くの苦難と困難が待ち受ける、いばらの道でもあります。

大学シーズの事業化に、多数関わってきた当社代表の伊藤の経験から、事業化に踏み出す際に、研究者の皆さんに考えて頂きたい”心得”をまとめました。一歩を踏み出すその前に、立ち止まってぜひご覧ください。

1.リスクを取ってでも、本当に事業化したいのか?

スタートアップが数多く生まれているアメリカにおいて、92%のスタートアップは3年以内に失敗したという統計があります。成功と失敗は隣り合わせであり、限られたチャンスを掴み取るために、持てる知恵とパワーの全てを注ぎ込むこととなります。特に創業時は顕著で、休みもろくに取れず、緊迫した日々の中が続く中で、疲弊し心身に不調をきたす起業家も存在します。
基本的に起業は大変なことです。上記のようなリスクと向き合い、覚悟をもって挑むことで、その先の道筋が開けます。

2.本当に世界を変えたいと思っているか?情熱を持ち続けられるミッションはあるか?

「研究成果により、大きな社会課題を解決し、社会をより良い方向に変える」ということに対して、どれぐらいのパッションをお持ちでしょうか。自身の根幹をなしている価値観や、そこに紐づく強い想いは、日々困難に直面する中で自身を支える柱となります。同時に、社会課題解決のために掲げるミッションが「世の中にとって正しいこと」であれば、必ず賛同してくれる人や仲間は見つかります。私たち投資家も、そいういった情熱を持った、世の中を本当に変えられることを期待できるような研究者の想いに共感をし、投資をしています。

3.時に、研究よりもビジネスを優先できるか?

自身の研究分野に愛情をお持ちの方ほど、その分野の「学術において革新的で優れた成果を残す」ということに心血を注いで来られた方が多いと思います。一方で、会社においては、時に、研究よりもビジネスのためのリソースを割いたり、実用化に近い技術開発を優先することや、事業継続のために一定期間内で収益につながる成果を生み出すことが求められます。
これまでの「研究」の延長線上とは、全く違うところに「ビジネス」があることを認識する必要があります。

4.顧客の課題を自らヒアリングできるか?

最先端の研究をしていた方ほど陥りがちなのが「この革新的技術を元に、どのような商品が生み出せるか」と、技術を起点に事業化を考えてしまうことです。しかし、生み出した商品が、市場の顧客が抱える課題解決に遠いものであれば事業は成功にたどり着けません。
市場ニーズと技術開発を紐づけるにはどうしたら良いのでしょう。それには、今周囲にいる技術・研究関連の方とのディスカッションだけではなく、顧客候補となる人の元へ足を運び、生の声から課題を見つけ出し、何を解決するかを定義する活動が求められます。過去の事例を振り返っても、労をいとわず、研究者自らが積極的にユーザーの声を聞くことは成功に近づく重要な要素です。

5.否定され、傷ついても挫けずに資金調達に挑めるか?

研究シーズからの事業化のためには、多額の資金を集めなくてはなりません。その資金調達の候補には、自身の技術や専門性を理解しきれない方も多く含まれます。そういった相手に対して、事業化に挑む想いや特徴・魅力を、繰り返し繰り返し説明を続けます。そして多くの場合、反応は否定やダメ出しで埋め尽くされます。
これまで研究者として高い評価を得てきた方にとって、積み上げてきた実績を幾度も否定され、プライドを傷つけられることは、容易に耐えられるものではありません。当社も1号ファンドの初期の資金調達時には多くの方から断られ続けました。そんな時でも、挫けずに計画やプレゼンを見直し続け、諦めずやっていこうという意志がなくては、資金調達は難しいでしょう。

6.研究者仲間に否定されても耐えられるか?

事業化を目指す上で、身近なところからも否定的な意見は投げかけられます。例えば、これまで研究仲間として交流をしていた、周囲の研究者たちから否定されることもあります。研究以外のもので勝負をするという事に対して理解できないという方もいれば、時には直接的に「お金儲けに走っている」「研究者として実力が足りないからビジネスに逃げた」というような心のない言葉を投げかけられることもあります。この主の戦いは、注目を集めた時こそ大きくなり、成功を掴んだその後にも続きます。

7.論理の正しさよりも実行力で示す気概があるか?

研究の世界では、その主張の論理的な正しさが議論され、新たな発見やその正しさが評価されます。しかし、ビジネスの世界では、正論が受け入れられない事は日常茶飯事です。自分の描くプランに納得してほしいのであれば、論理的に考えて正しいことを主張するだけではなく、シンプルに実行に移し、その成果と実績をもって相手を納得させる行動力・実行力が必要とされます。

8.経営者は事業に専念することができるか?

投資家は、経営者などコアメンバーに対し、全力、そしてフルタイムをもってそのスタートアップに専念しているかを、重要なポイントとして評価します。
もちろん、研究者自身が必ずしも経営に専念する必要はありません。自身は研究開発に軸足を置き、経営は適した別の方に任せるという選択肢もあります。その場合は、事業に専念できる人を社長として招き、ご自身は一歩引いて、研究の立場からそれを支えることになります。またCTOに技術指導するアドバイザーとしての関与もあるでしょう。
一方で、創業にあたって良いパートナーと巡り会えずに、研究者自身が仕方なく経営者となり、片手間での経営となった結果、事業立ち上げに苦労しているケースを数多く見てきました。
理想は、創業前に事業を任せられる仲間を見つけ、研究者は事業を意識しつつも、得意な研究開発に専念できる体制をつくる。そして経営はビジネス経験の有るパートナーに任せるのが、合理的で良い選択だと思います。

9.必要な仲間を必死で見つける事ができるか?

ベンチャーの創業において「チーム」が重要です。一人で創業するよりも2、3人で創業したベンチャーの方が成功確率が高いという統計データもあり、事業を成功させたければチームで創業すべきです。一方、経営者を始めとする創業メンバーは、失敗の要因にもなります。
経営者および創業メンバーの人選は難しいテーマです。一つの視点として、自分が今まで関わったことのない世界で仲間を探すことをお勧めします。一般的に研究者の周囲には、技術には理解がある方が多い一方、事業や経営がわかる方はほとんどいません。
その中から、無理に人選を行うことは失敗の可能性を高めます。過去の経験上、失敗をしやすい人選は、今までのネットワークから「部下のような人」や「自分のいうことを聞いてくれそうな人」を選び、自分の立場を守ろうとしてしまうケースです。
まず、自身が成し遂げたいビジョンとミッションを掲げ、それに共感できる人を探しましょう。自分より優秀な人、自分が持っていないスキル・経験を持ち、自分と補完関係にある人を必死で探し、仲間に巻き込む事が大切です。
そのためにはこれまで接点のないコミュニティにも入っていき、適任者を探さなければなりません。研究者のネットワークを補完することは、我々ベンチャーキャピタルの役割でもあります。

10.仲間を信頼し、任せることができるか?

研究者と補完関係にある経営者やビジネスマンは、会社を支え合う仲間です。創業チーム間において、何かを慮って発言できないことや、一部のメンバーしか発言が許されないような関係は望ましくありません。
研究者自身が長年研究開発をしてきた研究成果が無ければそのベンチャーの創業には至らなかったかも知れません。だからと言って、株式の持分や会社の権限が極端に、研究者に偏ってしまうような、創業者間の権限や役割分担がアンバランスなチーム運営は避けるべきです。
特に研究者自身が、経営に関与する意思が無かったり、経営は苦手と認識しているのであれば、尚更、他のメンバーを信頼し任せる姿勢が必要となります。創業メンバー同士は、ビジョンやミッションに共感しつつも、それぞれの異なる強みやスキル・経験をお互いを認め合い、尊敬し、お互いに得意分野を任せられる関係が望ましいです。

Beyond Next Venturesは、研究者の良きパートナーとなりうる、事業化を担える経験豊富な「ビジネスパーソン」や「経営者候補」を数多く知っています。もし経営者を探そう、何から始めようと迷った時にはぜひ私達にご相談ください。

最後に

ここまで挙げたものの中には、研究者にとって、すぐに受け入れられない事、耳が痛いものもあったかもしれません。これらは、ベンチャーキャピタリストとして、スタートアップの成功と失敗を数多く目にし、ベンチャー企業の起業家・経営者でもある伊藤自身が、これだけは心得ていないと、大きな落とし穴となり得ると考えているものです。
近年、政府のプログラムやベンチャーキャピタルの資金など、大学発ベンチャーを立ち上げる環境が整いつつあります。研究成果を実用化したいと考える研究者の方は、是非スタートアップに挑戦してみてはいかがでしょうか。そして、この記事を思い起こして頂きながら、一歩ずつ、正面から取り組んで頂けたらと願っています。
Beyond Next Venturesはそのような、研究成果の実用化にチャレンジする研究者を、全力で応援します。

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