大企業、コンサル、ベンチャーを渡り歩き、たどり着いたのは「スタートアップの共同創業」という選択

未来の起業家・ビジネスリーダーを育成するプログラム「Innovations Leaders Program」(以下、ILP)の卒業生インタビューシリーズです。

今回は、ILP2期卒業生の梶さんにインタビューを実施。梶さんは、2017年にILPにご参加いただき、約2カ月間研究シーズ「インスタリム」の事業化にコミット。プログラム終了後、現インスタリムCEOの徳島さんと共に共同創業者として同社に参画します。

起業、経営、スタートアップに興味のある方はぜひご一読ください。

<インタビュー対象者>

インスタリム株式会社 共同創業者 CSO 梶 芳朗氏
東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。2009年にソニーに入社し、社内弁理士としてPCやPlayStationなどの特許業務を担当後、外資系戦略コンサルティングファームのA.T.カーニーにてハイテク・通信業界を中心する大企業への事業戦略、海外展開、M&A、BPRなどの経営コンサルティングに従事。その後IPOスタートアップ2社(ユーザベース、マネーフォワード)の事業開発マネージャーとして、プロダクト企画、M&A/PMI、中長期戦略策定、新規事業開発などに従事。2017年より共同創業者としてインスタリムに参画。

大手メーカーからコンサルへの転職はスタートアップを見据えてのことだったのでしょうか?

新卒でメーカーの知財部門に就職しましたが、程なくしてリーマンショックとアジアメーカーの猛威の影響が色濃くなりました。各事業が苦しんでいるのに、当時の私は知財以外何も知らず、「事業を救うために自分は何もできないのでは」と強い無力感を覚えました。そこで、もっと力をつけて事業や経営全体に関われるようになりたいという想いが芽生え、戦略コンサルファームに転職して2年半ほど“修行”をしました。

「よし、実際に事業をやってみよう」となったときに、これからどんどん伸びていく成長分野で挑戦したい、30代は社会的意義の高い事業を通じて社会へ還元していきたいという想いが強く、情報プラットフォームベンチャーに入社しました。

ベンチャー2社をご経験されていますが、ILPにはどのタイミングで出会われたのですか?

ILPに出会ったのは、転職したベンチャーで直面した「経営者ニワタマ問題」を乗り越えるために、経営者の循環に入る機会を模索しているときです。

「経営者ニワタマ問題」は私の勝手な造語ですが、「経営経験がない=経営のチャンスが回ってこない」というニワタマです。

「経営は、基本的に経営経験がある人に任せることが多く、任された経験と実績により、さらに大きな経営を任され…と循環していくので、最初の一歩が非常に難しい」という話をとあるセミナーで聞いたことがあります。

ですが、当時の私はコンサルスキルを評価していただいた一方で、社内でも事業家というよりは社内コンサル的な立場で携わることが多かったんです。もっと直接的に経営に携わりたいと思う気持ちが高まると共に、このままでは経営者という一段上の立場にいけないのでは、と感じ始めました。

この問題を乗り越えるためにチャンスをじっと待つのも一つの方法ですが、上司・ポスト・全体の業績・タイミングなど自分でコントロールできない要素が多いなと。それだったら、早く経営者として「打席に立つ」ために、自ら事業立ち上げに参画していこうと思ったんです。と同時に、一発勝負にかけるのではなく、週末起業のように小さく始めて自分が上手くできそうか検証していく方法をとるべきなのでは、という考えもありました。

ILPは、創業前の有望な研究シーズと出会い、事業化に挑戦できるチャンスだということ。また、現職を続けながら参加できると聞いて、当時の私に理想的なフィールドだと思い応募を決めました。

ILPでインスタリムとの運命の出会いがあったわけですね?

満を持して参加したILPで、2カ月間事業化を手伝う研究シーズとして出会ったのが「インスタリム」でした。独自の技術で低価格高品質の義肢装具を製造し、世界の人に届けようとしている彼らの事業は、社会的意義があると共に事業性もある点がとても魅力的でした。

特に当時の代表で現CEOの徳島は、「あ、こいつと一緒にやりたい」と思わせてくれるような人でした。強いパッションを持っていますし、自分の考えに固執しない柔軟性や誠実さがあります。一方で、助けたくなるような隙もあります。後に彼と共同創業したのも、そんな人柄を信頼できたからです。

プログラムの開始当初は、インスタリム側からすれば全く異分野な人種に対して戸惑いや警戒があったかもしれません。しかし、ILPを通じてピッチ大会に向けた準備をする中で、事業プランの磨き上げ等でコンサル経験を生かせる場面もあり、徐々にメンバーから信頼されるようになりました。

徳島さんとの共同創業は、ILP卒業後すぐだったのですか?

いえ、ILPでインスタリムメンバーとの活動を終えた後、Fintechベンチャーに転職しました。

しかし、半年後くらいに徳島から連絡をもらい会うことに。補助金プログラムの選考に落選したこと、あるチームメンバーが事情により抜けたことなどをきっかけに、経営を担う仲間探しをしているとのことでした。

その時の私は、複数のスタートアップをアドバイザーのような立場で支援するスタンスでしたが、徳島の話を聞くうちに「世界中のQuality Of Lifeを上げる可能性を秘めたこんなに素晴らしい技術が、経営を担える仲間が足りないがために上手くいっていないなんて勿体無い」という気持ちが強くなり、もっとリスクをとって深く関わる決意をしました。

そして、2018年の4月に徳島と共同創業します。徳島はプロダクトや医療機器全般のアイデアや経験、ターゲット市場にしているフィリピンでのネットワークなど、私にはないものを持っていました。一方でデザイナー出身の彼が必ずしも得意でない事業計画や資金調達などは私が補えます。互いに足りないものを補い合える共同創業者となりました。

次なる挑戦へ

僕がインスタリムに参画して以降、おかげさまで3つの支援プログラムに採択されました

  • 2017年12月 日本貿易機構「日ASEAN新産業創出実証事業」
  • 2018年3月 東京財団政策研究所「Sylff Project Grant」
  • 2018年6月 東大IPC「第2回東大IPC起業支援プログラム」

社会的意義が非常にあるビジネスかつ競合が少ないので、その点では様々な立場の方から応援していただきやすく、「難しい課題の方が実は簡単」(馬田隆明著「逆説のスタートアップ思考」より)という言葉は本当かも、と思っています。

メーカー時代に感じた事業を生み出せない悔しさから始まったキャリアの変遷ですが、戦略コンサルや上場ベンチャーを経験することで従来の日本の製造業の課題をより客観的に理解することができました。インスタリムではその学びを活かしていますので、“新しい日本のものづくり”でリベンジしていきたいと思います。

最後に

2017年にスタートしたILPでは、これまで300名以上の卒業生を輩出しています。研究者との共同創業に興味がある方、スタートアップ経営や起業に興味があるビジネスパーソンの皆様は、ぜひお問い合わせください。
https://beyondnextventures.com/jp/contact/

Shota Sagiyama

Shota Sagiyama

Executive Officer, Head of HR Support